【夏至まつり】A Long Long Day｜リアクション

【夏至まつり】A Long Long Day

●お土産～気になる人と

　花輪占いで五十嵐尚輝先生と出会った――というか、先生の頭にすっぽり花輪を嵌めた御巫時子は、その縁の流れでいっしょにお土産コーナーを見て回っていた。
（どうして先生の頭に……なんだか……いつもより意識してしまいます……）
　夏至にちなんだ幸運グッズを見てあれこれ悩むのも、先生が隣にいると、ただの買い物よりずっと楽しい。
「ドライフラワーの花冠も可愛いですね」
　黄色の花で作った花冠を手に取り、そっと被ってみる。
「浴衣にも合うでしょうか？」
「似合いますよ」
　そう言われると嬉しくなってお買い求め。
「あ、見てください。ライラックの押し花のしおりも素敵です」
　リラとも呼ばれる可憐な花は、押し花にしてなお紫色が鮮やかに残っていた。
「尚輝先生、一緒にしおりを買いませんか？」
「いいですよ。気に入ったのならそのライラックの栞にしましょうか」
「はい……！」
　心密かに喜ぶ。栞一枚だけれども、先生とお揃い。大切にしようと思う。
　声がさっきより華やいできた。
「ポプラの葉付きの枝もありますね……帰ったら寮の窓に飾ってみようと思います」
「それはどういったいわれが？」
「フィンランドで、夏至祭りの飾りつけのとき窓に飾るそうです。……先生も飾りませんか？」
「いいですね」
　それぞれポプラの枝を一刺し持ち、時子は黄色の花輪を、尚輝は花輪占いで貰った花輪を被る。
　こうしてふたりはそのあとも、夏至まつりを楽しんだのであった。

◇

　せっかく来たのだから家族へお土産を、と立ち寄ったお土産コーナーで、鴻上彰尋は偶然、七夜あおいと出逢った。『誰かが拾えば、その恋はすくわれる』――胡乱路秘子が言ったのは、このことだったのかもしれないな、なんて胸のときめく思いがする。
「こんにちは。何か買うの？」
「欲しいなと思うんだけど、迷ってて」
　あおいはぺろっと舌を出す。
「俺も何かお土産を買おう」
「何を買うの？」
「ローズマリーとかフレッシュハーブがあればそれと、ドライフラワーの花冠がとても綺麗だなって思って」
　言ってから、乙女っぽかったかと思って言い足す。
「家で飾ってもいいとおもうし、妹が指輪とかティアラとか、最近こういうのが好きで。母さんもこういうの好みそう……女の人はこういうの好きだったりするのかな」
「うん。きっと好きだと思う」
　彰尋はすこしだけ悩んで、カスミソウの白とユーカリの緑の葉で出来た、ナチュラルでアンティーク風の花冠を指した。
「あおいさんはこういうのは好きかな？」
「あ、いいね」
「かぶってみたら？」
「似合うかなあ」
　そういいながら、彰尋が選んだ花冠をそっと頭に載せてみる。
「……どう？」
　ツインテールの髪に、白と緑がよく映えた。息を呑んで、答える。
「……とても似合うと、思う」
　カスミソウの花言葉のように無邪気な笑顔が、愛おしく、すこしだけ苦しい。
　ただただ、目の前の人を心の中に留めようと、彰尋は眩しさに目を細めた。