【夏至まつり】A Long Long Day｜リアクション

【夏至まつり】A Long Long Day

●お土産～月詠先生の夏至講座

「やああおい。何かお探しか」
　キャスケット帽を目深に被った旅鴉月詠に呼び止められ、七夜あおいは飛びあがった。
「うわあ、びっくりした！」
「土産物が多くてどれを買おうか困っているようだね」
「どうしてわかったの？」
「わかるさ、君の後ろ姿を見ればね。どれ、いくつか説明しようか」
　月詠が先生然と指示棒を取り出したので、あおいは畏まって「お願いします！」と頷いた。
「夏至祭は主に欧州の風習だ。緑の時期が少ない国もあるし、ドルイド信仰もあるし、とかく植物に力が宿ると言われている。ストーンヘンジって知ってるだろう？」
「うん。イギリスにある謎の巨石群だね」
「そう。あそこでお祭りするんだよ。夏至の日は妖精や薬草の力が強くなるといわれているから、このように押し花や花冠にするのだ」
「先生、それってどんな意味が？」
「いい質問だ。いずれも健康や恋愛成就を願って作られるのだよ。ナナカマドの枝は、提げると厄除けになる」
「すごく勉強になったよ。……でも、まだどれを買うか決められない！」
　月詠は仕方のない子だ、とひとつ息をついた。
「では興味を惹かれるものを全部買えばいい。いっぱい買って運気アップ！とはいかないかもだが、病は気から。信じるものはプラシーボ。おまじないを期待するならひとつ買えばいいのさ。邪魔にならない栞とかどうかな」
「栞……もいっぱい種類があるよ」
　ひとつひとつ手作りで、押し花のハーブも様々。どれ一つとして同じものはない。
「ポプリの材料買って自分で作るのも個人的にはいいと思う」と月詠は言った。自分はそうしよう、とも。
「ところで何をおまじないするのかな？　今恋愛成就したいいい人とかいるの？」
「え、え、そんな！　おまじないとかそういうのじゃなくって、ただ、かわいいな～って」
　慌てたあおいの肩に手を添え、月詠は、皆まで言うなとゆるゆる首を振った。
「うん、普通に無病息災でいいのだ」
「だ、だから、そんなんじゃないってば～！」