【創立記念】Ｂ☆Ｉトリエンナーレ！｜リアクション

【創立記念】Ｂ☆Ｉトリエンナーレ！

　ワッフルの飾り付け作業と給仕が一段落して気が付いた。
「ん、あれ」　
　レジ台の前に座っていたはずのアルレッテの姿が見えない。
「アル？」
　慌てて周囲に視線を巡らせる。星幽塔よりも平和な寝子島で、まさか誘拐等はあり得まいとは思うものの、何せ相手は浮世離れした神官様。うっかり誰かについて行ってしまわないとも――
「レイ」
　探し回っていた相手の声を背後に聞いて振り返ってみれば、神官様は誰かにさらわれるどころか、
「どっから攫ってきたんだよお前」
　十歳ほどの子供を数人、引き連れて戻って来た。
「人聞きが悪いなあ、人助けだよ」
(『チビっ子による』人助けか)
　にこにこと笑うアルレッテの後ろ、どこで揃えて来たのかパティシェ衣装を身につけた少年たちを見ながらレイリーは思う。くすぐったそうな笑みを交わす少年たちのやる気を削ぐ気には到底なれず、レイリーは少し考えた。
(んー、)
　ぱちん、両手を打ち合わせる。折角手伝ってくれるていう子供らも、楽しませてやりたい。となれば、
「お前ら好きな食べ物言ってみな、作ってやるから」
　なんだかんだ言って優しいレイリーに思わず笑みを零してから、アルレッテはレイリーの案に乗っかる。
「どうせならその子をイメージした食べ物や飲み物にしてみないかい？」
「コラボメニューってとこだな」
　飾り付けは私がするから、と提案してくるアルレッテに頷き、レイリーは子供たちから順番に聞き取りを始める。
「オレはオレンジジュースにシュワシュワの炭酸入れたヤツ！　あとパフェくいてー！」
　一番に嬉しそうな声を上げる竜世に頷きつつ、レイリーは思案する。
　これだけの人数が揃えば、自分は厨房代わりの家庭科室に籠っても問題なさそうだ。
「突然乱入してすみません」
　翔が大人ふたりに礼儀正しく頭を下げる。てっきり竜世の知り合いの店を手伝うものとばかり思っていたが、どうやら初対面の人達の店らしい。
「料理を手伝います」
　家で料理はよくしている。足を引っ張らない程度には手伝えるはず。それに、皆をイメージしたフードメニューは、
(コンセプトもいいし楽しそうだ)
　任せてもらえるなら会計も、と背筋を伸ばし眼鏡越しの瞳を怜悧に瞬かせてもう一度一礼してから、翔は初めて顔を合わせた星志郎にも宜しくと会釈する。
「宜しくなのです」
　おっとりと微笑む星志郎の隣、皆お揃いのパティシェ服を初夏の風にぱたぱた揺らして、竜世が楽しそうに飛び跳ねた。
「注文とったり運んだりすればいいんだな」
　瞳をきらきらさせ、元気を有り余らせ、
「お手伝いなら任せろよ！　みんなでがんばろー！」
　拳を青空へと突き上げる竜世に、少年たちと大人ふたりも一緒になって倣う。
　――しばらくの相談の後、『Grianmhar』の新しいメニューが出来上がった。

青空カフェ　Grianmhar
《メニュー》
◇Drink
・悪魔の涙
(バタフライピーとレモングラスの青くて冷たい爽やかハーブティー)

・バルティーグルのブルーホワイトソーダ
(ブルーライチシロップのホワイトソーダ割り。空色ソーダドリンクの底には『バルティーグル』の名を持つ水色と白の虎型ナタデココ)

・レッドスター
(ブラッドオレンジジュースのサイダー割り。きらきらで食感楽しい星型ゼリー入り)

◇Food
・フェニックスパスタ
(モツァレラチーズとバジルのトマトパスタ。不死鳥型もなかの飾りつき)

・スターライトナイトの流星パフェ
(星型チョコクッキー＋蜂蜜＋ヨーグルト＋ラズベリー＋苺ソース＋コーンフレーク)

・気まぐれプチデビルズケーキ
(悪魔の羽根型ココアクッキーの刺さった濃厚なチョコレートケーキ。担当少年パティシェによる追加のランダムトッピング(フルーツソース、ホイップクリーム、マーブルチョコ、アラザン)テーブルサービスつき)

・パトリ・アシェット
(クリームブリュレ、レモンギモーヴ、チョコミントマカロンの三種のフランススイーツのセットプレート)

　小さなパティシェたちとコラボレーションした自慢のフードとドリンクです。
　どうぞごゆっくり、お楽しみください！