ＳＴＯＰ、銀行強盗！｜リアクション

ＳＴＯＰ、銀行強盗！

「ふん。お前たちは何者だ？」
「本来、悪党に名乗る名などないが、問われたなら応じるのがヒーローの礼儀。寝子島の平和は俺が守る！　ザ・ストレイト、ここに見参！」
「……協力者その１」
「その２」
「以下同文」

　ザ・ストレイトがさっそうと答えると、恵御納たちもまた同調する。一種の様式美か。

　通路の奥の扉を開けると、『大怪獣ゴアラ』のお面をかぶった男が大金庫の前に立ちはだかっていた。
　190センチはあるだろうか。胸や腕周りも厚みがあり、まさに巨漢と言うのにふさわしい体格をしている。

　だが、それよりも異様だったのは、室内の様子だった。
　金塊が積まれ、柱となって乱立している。
　まるで、黄金の林の中にいるようだ。

　ゴアラ面の男は軍用ナイフを手にしながら、覇気を発散させた。

「お前たちが何者であっても、ここに来た時点で見逃すわけにはいかんな」

　その巨体に似合わない素早さで、金の柱の影に隠れる。

「こちらも逃げるつもりはない」
「ああ。そして、お前を逃がすつもりもない」

　旅鴉と八神が応じ、4人は互いに柱に隠れて様子を伺う。
　ロビーとは違い、静かに第2戦目が始まった。

　恵御納は考える。
　ゴアラ男との戦いはどうするべきか、を。

　ゴアラ男の筋肉の鍛え方を見る限り接近戦なんてしたくないし、ナイフまで持っているのだ。肉弾戦になったら勝てる気がしない。
　ろっこん『重く軽く』を使えば、相手の体重を軽くすることで打撃を弱めたりすることは可能だろう。しかし弱体化させることはできても、ナイフの恐怖は消せない。

　だから、基本は遠距離戦。『重く軽く』でシールを打ち出して、接近戦に持ち込まないように対抗する。

　その手にあるのは、猫が描かれたラベルシール。
　ねこシールの代用品だ。

　また、ゴアラ男のろっこんが何であるか見定める必要がある。
　敵を知り己を知れば百戦殆うからず。これは全員が一致した考えだった。
　4人とも、今までに何度も神魂関係の事件を経験してきた。その中で培った共通認識といえる。

　様子をうかがおうと、金の柱から少しだけ顔を出した瞬間、何かを弾く音がした。
　同時にこめかみの側を、硬いものがかすめる感触。
　あわてて首を引っ込めた恵御納だったが、一気に冷や汗が吹き出た。

「……嘘。なにか遠距離武器を持っている？」

　再び弾くような音が聞こえ、旅鴉のいるあたりで打撃音が響く。
　飛び道具の前に聞こえる音はなんだろう。まるで指を弾くような。

　隣接した柱に隠れたザ・ストレイトと八神は、慎重に確認する。

「ろっこんか？　どう思う、八神」
「先程見た限りでは、銃器を持っていたように思えない。また、弾丸のようなものが来る前に必ず指を鳴らしているようだが、普通の飛び道具だとしたら不自然だ」
「ということは」
「断言するのは危険だが、十中八九ろっこんだと思う。遠距離攻撃で、発動条件は指を鳴らすこと」
「かならず当たるような特殊な効果はなさそうだな。じゃ、作戦通りに」
「ああ、煙幕だな」

　八神のゴーサインに頷き、ザ・ストレイトは柱の陰から持っていた消化器を噴出させる。

　これはザ・ストレイトの提案だった。
　相手がどんな能力であろうとも、煙幕による視界の妨害は一定の効果があるはず。
　さらに相手のろっこんが目に見えない飛び道具であると判明した以上、この煙を通ることで正体が鮮明に分かるかもしれなかった。

「まずは俺が行こう！」

　視界を遮る白い煙の中へと身を晒すザ・ストレイト。