ＳＴＯＰ、銀行強盗！｜リアクション

ＳＴＯＰ、銀行強盗！

【第2戦：大金庫前　ゴアラ面の男】

　さて、どうしたものか。

　旅鴉月詠は、自身の状況を鑑みて首を傾げた。
　一言で説明すれば、いつの間にかねこじま銀行の中にいたのだ。

　ミラ・ペプロメーノの説明は聞いていたから何をすべきかは分かるが、さすがにいきなりすぎる、とため息が漏れる。

　なんとなくだが、眼の前の扉の向こうに強盗の誰かがいるような気がする。
　例えて言うなら、ゲームのステージ。扉を開けたら戦闘開始。そんな感じ。

「……人選ミスではないのかね？」

　旅鴉のろっこんは、基本的に戦闘向きではない。
　運動が苦手というわけではないが、武術や格闘術の経験はない。

「ぼやいても仕方がない。なんとかすることにしよう」

　転移即戦闘の状況ではないのは、不幸中の幸いだった。
　旅鴉のろっこん『絵空事』には、自分で描いた『絵』が必要不可欠だ。
　事務所あたりに戻ってでも、筆記用具を探さなくてはならない。

　ロビーに連行された後だったせいだろう。事務所には銀行員の姿はなかった。
　代わりに見覚えがある同級生たちがいる。

　風雲児轟こと『ザ・ストレイト』に、恵御納夏朝。そして八神修だ。

「君たちも呼ばれたのか」
「ああ。神様からの借り物を悪用する、こんな事件は見過ごせない！」

　悪を断ずる強い意志を声に宿して、言い切るザ・ストレイト（風雲児）。
　恵御納も小さく頷いた。

「……ミラの言葉を聞いたら、なおさら放っておけないね」
「とはいえ、情報が少なすぎるな。何より敵のろっこんが不明なのは厳しい」

　八神が考え込むように視線を落とす。
　旅鴉は同意を示しつつも、自身のろっこん発動に必要な物を探し始めた。
　無断借用になるが、非常事態ということで納得してもらうしかないだろう。
　恵御納も机の引き出しを開けてまわる。

「……僕のろっこんには、ねこシールが必要だから」
「同じだ。私も絵を描く道具がないと、どうしようもないからな」

　旅鴉の探していた筆記用具は簡単に見つかった。問題は恵御納のねこシールの方だ。

「……流石にないね。ラベルシールならあるけれど」
「ふむ、ラベルシールか。ああ、なら問題はない」
「……え、どういうこと？」

　旅鴉は薄く微笑む。
　その意味を理解した八神は、さらに何かを思いついたようだった。

「相手がどんなろっこんを持っているか分からない以上、策は用意しておくべきだな」
「八神。策ってなんだ？」
「つまり……」

　八神を中心に作戦会議する。
　内容をもう一度確認し、旅鴉は納得したように頷いた。

「なるほど。十分可能だろう」
「なら、俺が盾役を引き受けよう！」
「ザ・ストレイト。この作戦はあくまでも奥の手みたいなものだ。先に倒せるなら倒してしまって構わない」
「分かってる。任せてほしい！」

　4人は準備を終えると、事務所を後にした。