夢の続き｜リアクション

夢の続き

　人通りの途絶えた旧市街の道を河嶋ちせがゆく。寝癖を隠すようなひっつめ髪で黒いジャージを着ていた。サンダルの踵を引き摺って明るい方へと歩いていく。
　遠くにコンビニエンスストアの看板が見えてきた。眼鏡の奥のどんよりとした目に微かな生気が宿る。
　ブツブツと呟きながら自身の指を折り曲げていく。
　ちせは目的の店に辿り着く前に足を止めた。暗がりに身を潜めるようにして四角い建物が佇んでいた。扉には『ＯＰＥＮ』の札が掛けられている。
　――こんな夜更けに、本当に営業しているのでしょうか。
　考えるような目を扉に向ける。店内の様子を窺えるような窓はなかった。
　――縫い包みを売るようなお店には見えません。ゲームセンターは閉店時間を迎えています。ショットバーが適当でしょうか。
　ドアノブをそっと握る。意識が思考の中に潜っていく。
　――お酒は憂さ晴らしにはいいのですが、時間配分が難しいと言えます。眠気が訪れるまでの暇潰しには適していないのではないでしょうか。明日のバイトにも、いいえ、正しくは今日ですが響いてしまいます。
　ドアノブから手を離した。
　――やはりコンビニの一択ですね。
　コンビニエンスストアは真昼のように明るい。自動ドアの手前で眩しそうに目を細めて中に入っていった。
　すぐに右手に曲がり、雑誌コーナーの中程で立ち止まる。目に付いた雑誌を手に取ってパラパラと頁を捲る。
　――このチープな内容が素晴らしいです。質の高い眠りを提供してくれます。
　数分で生欠伸が出た。
　ラックに雑誌を戻し、適当に選んだ飴を購入した。
　ちせは店を出た。手にした小さなビニール袋は丸めてポケットの中に突っ込んだ。
　――自己管理は完璧です。これで寝不足は解消されてバイト先で失敗することはないでしょう。
　来た道をゆっくりと戻っていく。
　――本当は完璧ではありませんが。
　ちせは微かに笑った。
　誰もいない道の真ん中をふらふらと歩きながら帰っていった。

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あとがき

担当マスター：黒羽カラス
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今回の「夢の続き」シナリオはいかがでしたでしょうか。

叶えたい夢を体験することで、一層、想いを強めたＰＣさんがいました。
夢は美しい夢として胸の中に留めて今を楽しむＰＣさんがいました。
夢はあまりに遠すぎて、最後の別れを告げるＰＣさんには心を打たれました。
または未来に叶う夢なのでしょうか。はたまた甘い、ただの夢物語なのでしょうか。
現実に戻ってきて温かい夢に涙を流したＰＣさんもいました。

夢は色々な舞台となってＰＣさんの一人一人にそっと伝えてくれました。
形としては残らない夢ですが、きっと胸の深いところには残っていることでしょう。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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