寝子島心霊スポット｜リアクション

寝子島心霊スポット

【３】窓辺に佇むのは……

　そのころの天宵荘の二階では。
　左右がデジカメを手にして、廊下を歩いていた。
　あたりは静かで、響くのは彼女の足音ばかり。
　床板はところどころ、剥がれて穴が開いていたり、踏むとひどい音がしたりする状態だ。
　更に天井も、板が剥がれて垂れさがっている所や、大きな染みができている所などがある。
　ただ、一階と同じく、亡霊らしい姿や声は見かけていない。
「うーん、何もありませんわね。次の階に行きましょうか」
　廊下の両側に並ぶ部屋を見て回りながら一往復して、左右は呟いた。
　そのまま、三階へと続く階段を昇って行く。
　だが、彼女は三階の踊り場でつと足を止めた。
　そこにはちょうど、大きな窓があって前庭を見下ろせるようになっている。
　ガラスはすっかりくもってしまっているが、静かなだけに人声はよく聞こえた。それに、懐中電灯の光ぐらいは見える。
　左右は、窓辺に歩み寄った。
「もしかして、探索する人を募集していた方でしょうか？　一階に降りて合流しますわ」
　彼女は、ほのかたち一行の立てる人声と懐中電灯の明かりに呟くと、踵を返してそのまま、階段を降りて行った。

　一方、前庭では。
「見て！　あそこに誰かいるわ！」
　ぎょっとしたように足を止め、声を上げたのはほのかだった。
　彼女は、三階の窓辺を指さしている。
「え？　どこですか？」
「誰もいないですよ？」
　それを聞いて、そちらを見上げた秋月と朱音が、それぞれに怪訝な声を上げた。
「あら……。たしかに誰かいたと思ったのに……」
　言われて見直せば、すでに窓辺の人影は消えていて、ほのかは思わず首をかしげる。
「さっそく、噂の一つがお目見えしたということかもよ」
　樹が目を輝かせて言った。
「とにかく、中に入ろう」
　そんな一同を、修が促す。
　彼らは玄関からぞろぞろと、中へと入って行った。
　最初に目に入るのはむろん、ロビーだ。
「やっぱり夜だと雰囲気ありますね」
　秋月が言った途端、あたりにドンガラガッシャーン！　と大きな音が鳴り響いた。
「きゃっ！」
「何？　今の音？」
「どこか壊れたのかもよ？」
　驚いて一同がざわめく中、修が音のした方をライトで照らすと、入口脇にあったらしい彫像が横倒しになって割れているのが見えた。
「すいません、私です」
　小さく挙手して言ったのは、秋月だ。
　どうやら、彼女が足を引っかけて倒してしまったらしい。
「驚かせないでよ」
「あはは……」
　ムッとして返すほのかに、秋月は笑ってごまかした。
　それを見やって、ほのかは小さく溜息をつく。
「まあいいわ。……さて、どこから探索するの？」
　気を取り直して、彼女は尋ねた。
「俺は上階から調べてみようと思うんだが」
　ライトであたりを照らしながら、修が答える。
「そうね。私もさっきの人影が気になるし、三階を調べてみたいわ」
「では、僕も一緒に行こう」
　うなずくほのかに、サキリが言った。
　彼は、ほのかが怪我をしないように守ろうと考えているのだった。
「私は、地下室に行ってみたい。いろんな噂があるし、全室回ってみたいかな」
　対して言ったのは、樹だ。
「私も、地下から探索しようかと考えていたの」
　マリエッタも言う。
「じゃあ、二人で地下を調べようよ」
「そうね」
　樹の提案に、マリエッタがうなずいた。
「私は地下にも行ってみたいけど、今はとりあえず上に一緒に行きます」
　秋月が軽く挙手して言うのへうなずいて、ほのかは朱音をふり返る。
「都市子さんは、どうしますか？」
「そうですね……」
　少し考え、朱音は顔を上げた。
「じゃあ、私はそちらの二人と一緒に地下へ行きますね。二人だけだと、ちょっと心配だし」
「わかりました」
　ほのかはうなずくと、修とサキリ、秋月の三人をふり返る。
「じゃあ、行こうか」
　そして、地下へ行く三人とは別れ、ほのかたち四人は階上へと向かったのだった。

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