【中間テスト】一夜漬け狂騒曲　～寝るなよ？　絶対寝るなよ？～｜リアクション

【中間テスト】一夜漬け狂騒曲　～寝るなよ？　絶対寝るなよ？～

【11】

「おっと、いけない。そろそろ牛乳配達のバイト行かなきゃ」
　外はまだまだ暗い時間帯だが、逆巻天野が猫鳴館を出れば、あちらからデジカメと携帯握りしめた、後木真央が九夜山の坂を、召喚したふとましい三毛猫のがおーさんの歩調に合わせて、えっちらおっちらと登ってくるのと鉢合わせた。
「後木？　こんな時間に、誰かと思った。どこへ行ってたんだい？」
「天野ちゃんなのだ、オハコンバンワー！　お出かけなのだー？」
「うん、これからバイトだよ」
「そうなのだ？　テスト当日の朝まで、お疲れ様なのだ！　真央ちゃんは他の寮が無料開放されるって聞いたから、新聞部の幽霊部員として、情報収集に行って来たのだー」
　カメラを持ち上げて、にんまりと笑う。幽霊部員という割には、随分頑張っている真央ちゃんであった。
「ついでに猫もいっぱい撮ってたら、すっかり遅くなったのだ！　途中で円ちゃんにも会ったのだ！　取材の様子は、一旦ねこったーに上げたから、天野ちゃんも見るのだ？」

　真央の勧めに従って携帯の画面を覗き込めば、時系列で画像つきの各寮のテスト勉強の様子が、アップされていた。

『星ヶ丘ラウンジは突き抜けていたのだ！
　なんなのだ花が飾られたラウンジで、優雅にお茶タイムしながら勉学なのだ！？
　これは逆に勉強進まない気がするのだ、ハイソなティーなのだ。
　お手伝いさんの方が多そう系だったのだ』

『桜花寮すごいのだ、お茶ご自由になのだ！
　ついでに言えば明るくて広くて、これはみんなでワイワイ勉強が進みそうなのだ！』

『蔵なのだ、学習塾のスパルタ夏期講習のイメージなのだ、桜花寮とは別の意味で勉強進みそうなのだ！
　うあー、まゆちゃんセンセー怖いのだ！　入ったら出られそうもないのだ、怖いから外から覗き込んだのだ。
　まゆちゃんセンセーに、鬼軍曹スパルタンＸの称号を与えるのだ……』

「へえ、頑張ったね」
「猫鳴館はどんな感じだったのだ？」
「こちらは……」
　天野が説明しようと、口を開いた時。

『パッション！　若いエロスが！　サンシャイン！　夜明けを切り裂く！　あっしはエロスが抑えきれない！　これがときめき！　ライジング・サーン！！』
　山田与太郎の威勢のいい声と共に、東の空に向けて猫鳴館のトイレから一条の光が走りぬけ、小鳥達が夢の世界から朝焼けの空に、いっせいに飛び立った。
　与太郎が股間から【ライジング・サン】を、撃ち出したのは自明の理だった。
　ああ、こういう事前にもあったなぁ……。

　真央が駆けつけた時、猫鳴館の突き当たりのトイレの便器は無残に破壊され、大穴が開いた壁がポロポロと崩れ落ちるばかりだった。
「猫鳴館、落ち着くのだー！」
「なんだい、この騒ぎは！　ゆっくり寝られやしないね」
　お休みになっていた、桜崎巴が恍惚の表情を浮かべる与太郎と、見るも無残なトイレの惨状を見比べた。
　そのお顔には、かわいらしい猫のおヒゲが描きこまれていたが、それを見て笑う者は誰も居なかった。
「ふうんなるほど、あんたの仕業かい。人様の住居で無体をして、覚悟は出来てんだろうねェ！？」
　80年代スケバンを体現した乙女が本気を出し、与太郎は悲鳴を上げた。
　無論、与太郎の保護者に後日修理費の請求が行くが、それはまた別の話。

「あふ……よく寝た～。おはよー☆」
　大部屋。差し込む朝陽の中、鬼河内萌が暢気に挨拶した。
　その顔を指差して、伊賀解理が無邪気な笑い声を上げた。
「君のその顔、ラクガキされてるじゃないか！」
　萌の顔には、猫のヒゲのような三本線。
　お腹を抱える解理に、萌もふき出す。
「君こそ、顔におヒゲが生えてるよ？」
「なに？」
　萌の指摘に、慌てて鏡を見れば、彼女の顔にもやっぱり左右に三本ずつのヒゲが。
「ふにゃぁ～！！？」

　難波辰は、もっとひどい。
　額には、バッチリと油性マジックで『肉ドレイ』の文字、後頭部にはデッカイたんこぶ。
　ラクガキの犯人は勿論、四野辺蘭月。
　登校までにどうにか落とそうと、額が赤くなるほどこすっている辰を茶化しながら。
（ムードのある場所で、ちゃんと向き合うて言うてくれるまで、返事は保留や）
　蘭月はわざとそっぽを向く。

「ああ～、もう時間ないわ。しゃーない、前髪で隠すか！　蘭月、ガッコ行こ！！」
　呼ばれて振り向けば、辰はすぐさま制服に着替えて待っていた、蘭月の手を取った。
「難波くん！？」
「走るで、転ぶなよ！」
　辰に手を引かれて、九夜山の坂を駆け下りながら、蘭月は朝の空気を胸いっぱいに吸い込んで、明るい声を上げた。

「よっしゃ……テストお互い頑張ろな、難波くん！」

　終

　執筆：メシータ

このページにイラストを設定する

あとがき

担当マスター：焼きスルメ／メシータ
ファンレターはマスターページから！

お待たせして申し訳ございません！！
乾物です、焼きスルメです。
とうとうリアクション公開でございます！

執筆途中にて２度体調を崩し（うち一度は経口補水液の世話になるほどの熱中症）、猫鳴館パートを急遽メシータマスターに担当していただきました。
乾物の救援に迅速な登板をしてくださったメシータマスターに、この場を借りて最大限の感謝を（拝礼）！！

ここを先に読んでいるプレイヤー様方へ。
悪いことは言わん。
素直に最初から読むべし。

皆様の意欲を最大限に汲み取った結果、皆様をお待たせしてしまったことを心苦しく思います。
ですが、テスト勉強でここまでハッチャケられるあなたたちが大好きです！　愛してます！
でも、恐らくもっとぶっ込めたはずじゃないかな！？　
もっと貪欲になろうぜ皆の衆ベイベー。

今回の個別コメントは割愛させていただきます。
代わりに、各舞台の所感をこの場に記載しようと思います。

＜星ヶ丘寮＞
深夜テンションって、ぱないの（真顔）
神魂の影響とは言え、ラウンジのあの展開はアクション届くまで乾物でも読めなかったですから！
勿論、やるからにはぶっちぎりで描写しますけどね！

それと、自室（というか自宅）で勉強会という手もあったことに気付かされました。
さすがセレブ、これは一本取られたなぁと思いつつ、ラウンジとは別空間だから大暴れ出来るので遠慮せずやらせていただきました。

＜桜花寮＞
前半の真面目＆ほのぼの学習風景からのー、おっぱいの大進撃。
執筆の最中、「乾物は、あとどれだけ『おっぱい』という単語を書けばいいんだろう」と賢者モードに何度か陥りました。
恐らく、数年分のおっぱいという単語を書き連ねたのでしばらく『おっぱい』と書かないと思います。
嘘です。
これからも乾物はいっぱいおっぱい書き連ねていきたいと思います。

そしてののこへの配慮を唯一行った方、グッジョブでした！
コメディシナリオなのにバッドエンド要素仕込ませるなんて、何この乾物マジおにちく。
平穏なフツウを守った偉業は胸を張って誇っていいでしょう。
なにより、和気藹々な雰囲気が桜花寮はあって落ち着きますね。
おっぱいおっぱい。

＜相原邸＞
どうしてこうなった。
繰り返す、どうしてこうなった。

おっかしいなぁ？
まゆ先生がこんなに変人だったとは思ってもいなかったよ。
こんなまゆ先生にした責任者、今すぐ出てこい！
あ、乾物でした。
ならばしかたないね。
(｡･ ω<)ゞてへぺろ☆

ともかく、本当にまゆ先生の人気が半端なかったです。
愛されてるなぁ、変人だけど。
そして変態の格好の餌食だってことも把握しました。
君たち、そんなにロリ巨乳のアラサーが大好きなのか！？
そうか、大好きなんだな！？　よしわかった！
大丈夫だ、問題ない。
乾物も大好きだ！！

全編通して最もカオス度が高い舞台でした。
送られてくるアクションも最も混沌。
海の家のカレーにドリアンが入ってるくらい混沌。
大気圏を楽々と突き抜けたアクションに脱帽です。
次はアンドロメダ星雲までぶっ飛ぶアクションに期待します。
――と、乾物はさりげなくハードルを上げてみます。

＜猫鳴館＞
メシータマスター、重ねて御礼申し上げます。

本文中にもあったとおり、予想に反して大人しめのアクションだと感じました。
解せぬ。
反面、君たち、ちゃんとこういう場では大人な態度で臨むんだなぁと感心させられました。
どこかのカオスな温度差と見比べると……。
案外、猫鳴館の住人は普段からカオスに慣れているせいか、こういう時こそ何処よりも大人なのかもしれません。

今回のリアクションがきっかけで、猫鳴館に興味を持ちそうな人もいらっしゃいますね。
これからのシナリオでどう動くかは、皆様次第ですが、今日の経験がきっと活かされることでしょう。

以上で、各舞台の所感を終えます。
それでは、また乾物のシナリオでお会いしましょう！
多くのご参加、誠にありがとうございました！！！

↑ページトップに戻る