【中間テスト】一夜漬け狂騒曲　～寝るなよ？　絶対寝るなよ？～｜リアクション

【中間テスト】一夜漬け狂騒曲　～寝るなよ？　絶対寝るなよ？～

【９】

「もう朝じゃないですか嫌だー！」
　涙目の千鳥雅人の声で、寝ていた参加者の目が冴えた。
「おはようございます」
　綾辻綾花が七夜に朝の挨拶。
「凄いですね、あおいちゃん。本当に完徹したんですか？　私、途中で寝ちゃって……」
　眠い時は寝ておかないとお肌にも悪いですから、とニコリ。
　七夜は眠い目を擦りながら、威厳ある態度で言ってのけた。
「監督役が寝たら意味ないじゃない！　案の定、深夜から早朝にかけてはカオスだったし。あ、ショール貸してくれてありがと！」
　はいこれ、と綾辻から借り受けたショールを手渡した。
「起きてて正解だったよー。勉強もそこそこに、騒いだ人たちへお説教してたんだから。最初は監督役なんて務まるか不安だったけど、やってみたら意外と性に合ってたかも？」
　七夜、実はデキる女のようだ。
　綾辻は彼女を労ろうとしていたが、今回に限っては無用な心配だったようだ。
「無理はしないでくださいね……？」
　それでも、やはり綾辻は七夜を気遣うのであった。

「よっしゃー！　みんなのおかげで今日のテストはなんとかなりそうだぜ！」
　桜井ラッセル、会心の笑み。
　八神塾は大成功に終わった。
　塾長の八神は頃合を見て寝てしまったが、受講生が互いをカバーしあい、その殆どが完徹したのだ。
　勉強したということより、やり遂げたという達成感が、彼らに大いなる勇気を授ける事だろう。

「もこもこ、遅刻する。シダに乗れ。チアントイ！」
　シダの掛け声で、彼女の姿がベトナムユニコーンと呼ばれるサオラへ変身する。
　緑野は颯爽とその背に跨り、裏道を駆け出した！
「はいよーシダー！　ひっさつ弾丸らんなー！　きーん！」
「ありがとう、シダさん！　あ、朝ごはん食べてない！」
　今更重要なことに気が付いた緑野。コンビニに寄っていくか迷う。
「シダ、シカせんべい食べたい」
「あれ、人が食べるものだっけ？　って、コンビニに売ってないよ！」
「そうか、残念。でもシダ飛ばしたから、時間ある。何か買おう、もこもこ」
「そうだね、そうしよっか！」
　学校は目の前。シダの活躍で遅刻の心配はない。
　朝食を摂ってからでも間に合いそうだ。
「お泊まり、楽しかった、シダ。今度は、ベットで寝たいけど」
　ダルそうに首を回すシダ。
「色々あったけど楽しかったね！　でも、テスト大丈夫かなぁ？　寝ちゃったし……」
　不安がる緑野に、野菜ジュースを手渡すシダはウィンクしながら励ました。
「テスト？　まぁ大丈夫。チュックマイマン（幸運を）、もこもこ」

　そう、あとは己との戦い。
　知識も大切だけど、乗り切ろうという姿勢が問われるのが定期テスト。
　大丈夫、乗り切った君たちなら、テスト期間も突破できる、きっと、多分、メイビー！

　つまり、これは全てフラグだったんだよ！！
　ナ、ナンダッテー！！

　まさかテスト初日にあんなことが起きたなんて、誰も予想できなかったんだ……。

＜桜花寮編・了＞

執筆：焼きスルメ