輝け！ドリームガールズコレクション！！｜リアクション

輝け！ドリームガールズコレクション！！

　【さあ、存分に堪能を】

「(……ほとんど、お世話になってしまったな……)」
　自分の、柔らかな形の良い胸の膨らみを見ながら、身長も縮み黒髪の美しい少女となった鴻上彰尋は思いを馳せた。
「(親切な、人だったな……)」
　見知らぬ人であったため、とっさに敬語が出たが、先程彰尋に世話を焼いてくれた滝原レオンは恐らく同じ年代であっただろう。──元が男性か女性かについては、そこに到る前に思考が閉じた。

　衣装は、見れば見るほど人によって様々だが、彰尋が選択したものは現代風のコーデだった。
　柔らかい白をした、身体のラインが、うっすらとシルエットで分かる程度のゆとりあるニット服。そして、それを腰で引き締めるようなデニムのホットパンツ。
　瑞々しい少女らしさにあふれたホットパンツからは、薄手で肌が透けそのラインに影が走る黒のストッキングで包まれた脚が、清々しく今腰掛けている椅子に合わせて膝を淑やかに折っている。

　靴は見栄えの良さと、自分がそれを履いて自然に歩ける範囲と必死に模索して、ヒールの高くない黒のパンプスを選択した。
　少し靴は地味かも知れない。だが、多分考えているアピールを考えればこれで大丈夫だと、演劇に触れてきた感性がそう告げていた。
　──そして、舞台袖へと、自分の名を呼ぶ声が聞こえて来た──

　透き通った黒の瞳をスポットライトの光に反射させた少女が、口許に僅かに自信を見せる微笑みを湛えて舞台を歩く。
　演劇の練習には美しい歩き方、ならびに舞台で醜く見えない歩き方は必須科目だ。家庭の事情で部活に参加出来なくとも、一人で欠かすことのない練習の一環として、彰尋はモデルウォーキングも難なくこなす。
　目指す先の前舞台に、ゆっくりと左右から照明を当てられた一脚のアームチェアが浮かび上がった。
　彰尋はなだらかな指先で、一人用のアームチェアの背にそっと指を滑らせた。
　それだけで、観衆が「くはっ」と鼻もないのにセクシャリティを感じて鼻血を垂らす。
　そして、瞳と同じ黒の髪を揺らして椅子に座った彰尋は──照明の全てが集中した椅子に足を組み、履いていた片方の靴を、踵からゆっくりと脱ぎ放した。

「──！！」
　宇宙人たちの目が一瞬にして釘付けになった。
　地味に見えた黒の靴の下、透き通る薄編みのストッキング──そこから透けて照明で光る、色鮮やかな赤をした華やかなペティキュアの脚が、
　ストッキング共々、舞台正面の自分達に、真っ直ぐ向けられているという事実に！

「ふおおおおお……っ！！」
　しかも、脱いだ靴は、組まれているもう片方の足指に引っ掛けられて、そこで小さく揺れている……
　彰尋は──宇宙人が見える黒髪の少女は、その脚を向けたままに、身を預けるように両手を肘掛けに乗せた。
　アームチェアに少し胸を反らして背中を預けたその姿は、まさに伸ばされた脚をこの上なく強調するようで。

　そして、彰尋は、
　そのまま、正面に伸ばした紅の咲いた指先の甲を、宇宙人たちを誘うように持ち上げた──

　足指の、足の甲の稼働位置はそれ程大きなものではないだろう。
　だが、この行為は『ふぇてぃしずむ』にときめきを感じる宇宙人たちを一網打尽にした！
「ふああああ、と・き・め・き……！」
　堪えきれなくなった宇宙人の一体の触手が、フェティシズムの色気で殺しに掛かってきた(宇宙人たちにはそう感じた)彰尋の伸びる足首に絡みつく。

「えっ？　いや、うわ、あの……！！」
　彰尋がその瞬間に、自分の取った見事な行動と、触手が伸びるまでの今の現状を客観視して、一気に顔を真っ赤にした。
「わ……っ！」
　そして太腿近くにまで絡まってきた触手に、彰尋は声を詰まらせ身動きが取れなくなる。まず、この体勢で椅子に座れば、即座の身動きなど取れようもない。これは、宇宙人たちのやりたい放題かと思われた。
　しかし──『ふぇてぃしずむ』を拝する以上は、宇宙人でも紳士でなくてはならない。

　気が付けば、それを掲げる他のイカタコたちに、触手を伸ばしていた宇宙人は、めためたに叩かれていた。
　脚から、無事に触手が離れていく……

「あ……危なかった……」
　それは彰尋が、間違いなく九死に一生を得た瞬間だった……かも知れない──