やんちゃ座敷童子のいる夜｜リアクション

やんちゃ座敷童子のいる夜

●御巫時子はかく語りき

　トキメキが止まらない！　状態のアケーチ・タッマーキを余所に、時子はオムライスをふもふもと食べる。
「このオムライス、美味しいですね……」
「だよな！　プリンも美味いぜ。おかわり出来ねぇかな……」
　既に自分の分の食事をぺろりと完食している楢木春彦がそんなことを零せば、
「春彦君、良ければ、俺の分も食べる？」
　と、如月蘇芳が自身のお膳を示してみせた。
「え、マジで！？　……って、如月先輩、殆ど食べてないじゃねぇっすか」
「残念ながら、小食なんだ。だから、余力があるなら、ハンバーグとかもどうぞ？」
「へえ……そういうコトなら、有り難くいただくっすね」
　あざっす、と、にっと笑って、春彦が蘇芳の分の食事を受け取る。
　その様子を目に、青山絢は、ほう、と息を吐いた。
「すごい食欲ね……」
　完食を目指している絢だが、食事の味が感じられず、未だ道は半ば。
　食事事情もそれぞれな中、時子は、マイペースにオムライスを食べ終えて、
「……さて。次は、私がお話をしましょうか」
　座敷童子さんに気に入ってもらえたらいいのですが……と、にっこりとした。
　そして、こほん、と小さく咳払いを一つ、話し始める。
「……あるところに、女の子に大事に大事にされていた、歌の得意な小鳥がいました」
「むっ。その小鳥が、何かやらかすんすか？」
　楽しげな様子を隠すことなく紗雪幽が尋ねるが、時子は「いいえ」と首を横に振った。
「事を起こすのは……小鳥の、『影』です」
　小鳥の『影』は、女の子に愛されている小鳥が羨ましくて、妬ましくて仕方がなかった。
　そうして『影』は、小鳥と成り代われるようにと、月に祈る。
「願いは叶えられ……『影』は、女の子に正体がバレない限り、『小鳥』でいられるようになりました」
「それはまた……おとぎ話のようでいて、残酷な話だね。本物の小鳥は、どうなってしまうんだろう？」
　柏村文也の言葉に淡く笑み、時子は、物語の続きを語る。
「『影』の願いは、すぐに破綻してしまうんです」
　小鳥と入れ替わった『影』の歌声は、誰もが耳を塞ぎたくなるような不協和音だったのだ。
　はて、と、八神修が顎に手を宛がい、首を傾ける。
「それは……願いを叶えた月の罠かな？　それとも、『影』の心を、歌声が映し出したのか」
「わかりませんが……とにかく『影』は、契約の通りに、元の姿へと戻りました」
　けれど、一つ、奇跡が起こった。
「女の子は、その日から、『影』にも声をかけるようになったんです」
　女の子はきっと、『影』の寂しさに気付いたんでしょうね、と、時子は話を締める。
　アケーチが、ぱちぱちと拍手をした。
「皆、幸せになれたのですね。まさにハッピーエンド！　とても素敵です、ふふ……！」
「って、あっはははは、いってー！」
　と、アケーチの声に重なるように弾けたのは幽の笑い声。
　いかにも機嫌の良いその様子に、恵御納夏朝は「ええっと……」と困惑に眉を下げた。
「座敷童子さんに悪戯されてる……ん、だよね？」
「あ、はい。そうっすそうっす。今、めっちゃ殴られてる感じで」
「なのに、そんなに笑って……もしかして、何か悪いものが！？」
　なんて、ハッとして眼差しを真剣なものにする夏朝と、
「……もしくは、幽くんは実はドＭなのかも……？」
　と、真面目なのかそうでないのかよくわからない考察をする響タルト。
　いやいや！　と、幽が、まだ笑いを滲ませながらも声を上げる。
「普通に、超楽しいだけっすから！　滅多にできない経験だし？」
　にへへと笑う幽は、どこまでも満足げなのだった。

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