旧市街で何でも屋の偉丈夫――
犬杜 一閃からチラシを受け取った
紗雪 幽は、
「これって、マジなんすか?」
と、少し赤みがかった灰色の瞳に好奇心と期待の色を乗せて、一閃へと尋ねた。
こく、と一閃が頷けば、幽の瞳の輝きが一層濃くなる。
「夜、座敷童子のいる古い和室で、食事をしながら怪談話をするアルバイト! 超俺向きじゃないっすか!」
しかも『仕事』の最中、頼る明かりはろうそくの放つ微かな、弱々しいものだけだとか。
本当に『出る』んすか? と、軽い、楽しげな調子で問えば、一閃は少し考えたあとで、
「姿を見た者はいない、が、視線や気配を感じた、足音が聞こえた、という話は幾らでもある」
と、応じた。
その座敷童子は、賑やかなのが好きなのだという。
だから時折、こうして彼のための『食事会』が開かれるのだ。
「人ならざる者とは言っても、幸運を呼ぶ座敷童子だからな。悪さはしない。ただ……」
「ただ?」
「随分と、悪戯が好きなようだ。怪談話の途中に、こう、くすぐられたりする」
「くすぐり……なんか、あんまり雰囲気ないっすね」
「だが、暗がりで、怪談話の最中、不意に同席者が狂ったように笑い出すというのは……」
そこまで言って、一閃は細く重い息を吐いた。
この特殊な『食事会』の参加者を探すのは、中々に難儀なようだ。
「……あとは、怪談話も少し特殊でな。件の座敷童子は、戦隊モノにハマっている」
「? つっこみどころは満載っすけど、それが、怪談話とどう関係が?」
「悪い人間が霊や妖に懲らしめられる、性質の悪い霊や妖を人間が退治する、みたいな話が所望されるんだ」
「さっき以上に雰囲気台無しっすね!?」
思わず声を跳ねさせる幽。
だが、一閃は至極真面目な顔をしている。
「全く、その通りではあるんだが……」
話の途中に、テンションの上がった座敷童子がきゃっきゃとはしゃぐ声が突如耳元で弾けたり。
ヒーローの真似をして、唐突にキックやパンチを繰り出したり。
或いは、巨大ロボットにでも乗り込んだつもりなのか、人の背中によじ登ってきたり。
「同席者の驚く声、『痛い!』という険呑な叫び、不意にずしりと重くなる背中……」
――『食事会』が恐怖の渦に巻き込まれることも少なくない。
一閃の言葉に、「成る程ー」と頷く幽。
「害はないし話だけ聞くと全然怖くないっすけど、参加者からすると中々堪える、って感じっすかね」
「ま、俺的には結構楽しそうっすけど♪」
なんて、幽は口元に緩く弧を描いた。
お世話になっております、巴めろと申します。
このページを開いてくださってありがとうございます!
シナリオ『それいけ蚤の市! ~欲しい物は何ですか?~』より、
紗雪 幽さんの願い事を(アレンジ度高めですが)シナリオ化させていただきました。
幽さん、ガイドへの登場誠にありがとうございました!
もしこのシナリオにご参加いただける場合ですが、
ガイドは一例ですのでご自由にアクションをかけてくださいませ。
以下、シナリオの詳細でございます。
このシナリオの概要
何でも屋『いぬもり』を介しての、座敷童子が同席する『食事会』のお誘いです。
座敷童子に呼ばれるのか、「怖い話は苦手なのに話を聞くや何故かOKしてしまった」等、
気付くと『食事会』に参加する運びになっている、ということもある模様。
時刻は夜、場所は旧市街のとある古いお屋敷。
立派な造りの屋敷の中、ある一室(和室)には、座敷童子がいると昔から伝えられていて、
彼(言い伝えによれば男の子とのことです)を楽しませるための『食事会』が定期的に催されており、
今回も、そのうちの1回、ということになります。
準備された食事をいただきながら怪談話をするだけで中々の額を貰えるアルバイトですが、
座敷童子のためのお膳も準備されたろうそくの明かりだけが頼りの部屋の中、
・視線や気配を感じる、足音が聞こえる
・誰かにくすぐられる(くすぐられた人が狂ったように笑い出す事態も多数)
・怪談話の途中に、子供がきゃっきゃとはしゃぐ声が突如耳元で聞こえる
・唐突に、キックやパンチを食らった感触が……
・背中に座敷童子がよじ登ってきたらしく、不意に背中がずしりと重く……
等々の事象が暗がりの中で起こるのがちょっとした噂(知っていても知らなくてもOKです)になっているようで、
参加者を集めるのが年々難しくなっているのだとか。
なお、座敷童子の姿は見えませんが、上述の事象は全て実際に起こり得ます。
何が起こるか、誰がどのタイミングで被害(?)に遭うかは基本的にランダムですが、
この現象を体験したい! 等のご希望があれば、可能な限りで汲ませていただきます。
ただ、他の参加者様のご希望との兼ね合いもありますので、
必ず希望通りにいくとは限らないこと、ご了承くださいませ。
また、アクションには、『披露する怪談話』と『何か起こった時の反応』を必ずご記入ください。
怪談話は、ガイド本文にあるような、スカッとした話が座敷童子に好まれます。
怪談話の指定に関しましては、サンプルのような軽い話で問題ありませんし、
怪談話はGMに任せる! というご希望も承ります。
その際は、お任せであることがわかるよう、アクションにその旨ご記載くださいませ。
何か起こった時の反応は、怖さのあまりひたすら叫びまくる、驚きはするけど怖がらない、
全く動じず不思議現象を楽しむ、平気に見えるけど怖すぎて固まっているだけ……等々、
簡単に挙げるだけでも色々なパターンがありますので、
反応にがっつりこだわりのある方は、しっかりめのご指定をおすすめいたします。
勿論、ふんわり指定で詳細お任せ! でも、楽しく執筆させていただきます。
ちなみに、『食事会』で供されるのは、
・目玉焼き乗せハンバーグ(デミグラスソース)
・ふわとろオムライス
・エビフライ2尾
・ミニグラタン
・コーンスープ
・サラダ
・人気ケーキショップのとろとろ濃厚卵プリン
プラス、お好きな飲み物(成人していればお酒もOK)です。座敷童子の好みでお子様セット風。
登場NPC
今回は『食事会』の描写がメインになるかと思いますが、
屋敷の別室には下記NPCが控えており、状況とアクション次第で登場いたします。
全く出てこない可能性も高いです。
○犬杜 一閃
何でも屋『いぬもり』の主。
花笠家の『食事会』の参加者探しと、当日、念の為に花笠家の主と共に控えておくのは先代からの仕事。
○花笠 珠子(はながさ・たまこ)
座敷童子のいる屋敷に生きる、花笠家の若き当主代理。20代後半。美人。
幼い頃から座敷童子と馴染んでいるが、『食事会』を担当するのは初めてでどきどき。
仲睦まじい両親が長期旅行に出かけてしまったので、当主代理を務めることになったとか。
それでは、やんちゃな怪異と一緒の時間、どうぞお楽しみくださいませ。
ご縁がありましたら、よろしくお願いいたします!