ゼリンといっしょ｜リアクション

ゼリンといっしょ

　アケーチ・タッマーキは歩きながらゼリンに頬擦りをする。
「ああ、柔らかい、白いあんみつのような甘美に私が蕩けてしまいそうです、ふふ…！」
　目にした人々は何かを思い付いたような仕草でスマートフォンを弄り始める。小さな子供はアケーチを指差し、母親に縫い包みをせがんだ。
　星ヶ丘マリーナに訪れた。アケーチは穏やかな海をゼリンに見せる。
「ゼリンたん、これが海ですよ。とても雄大で荒々しく、時には今日のように光を浴びて神々しい姿にもなる、これが海なのです、ふふ！」
　ゼリンはもぞもぞと動いてアケーチを見上げる。おちょぼ口となって、ぷにょ、と愛らしく鳴いた。
　衝撃がアケーチを貫き、よろける。支える足が激しく震えた。
「ゼリンたんがいながら私は何を口走っているのでしょう！　その海をも凌駕する愛らしさに溺れてしまいそうです！」
「ぷにょにょ？」
「ああ、無垢な瞳が私を甘く溶かして、ダブルあんみつの世界にどっぷりと頭の先まで浸っているようです、ふふふ！」
　アケーチはゼリンを抱き締めて弾むように歩いた。気分の高揚に従って跳んだ。前後に足を開く。着地すると回転しながら進み、軽やかなステップで埠頭の先端に行き着いた。
「この愛らしさを残すには絵にするしかありません！」
　ゼリンを下ろすと背中に入れていたスケッチブックを取り出した。
「では描かせていただきます」
「ぷにょ～」
　寂しげに鳴くとゼリンはアケーチの足に縋り付いた。上を向いてぷるぷると震え出した。
「そ、そんな哀願するようなゼリンたんなんて、素敵すぎます、ふふふ！」
　あまりに近く、不自然な姿で絵を描く必要があるので姿勢を変えた。アケーチは両足を伸ばして座った。脛のところにゼリンを載せて絵を描き始める。
「何という白い光沢！　純白の羽は愛らしい！　円らな瞳にアンバランスな口が破壊的な美を内包しています！　神の造形の素晴らしさに私の画力が限界を超えてしまいそうです、ふははは！」
　感情は溢れ出し、加速する。手が止まらない。僅かな時間を惜しむように細部まで描き出す。
　鼻息荒い様子で完成した絵をゼリンに見せる。
「いかがですか」
「ぷにょにょ！」
「そうですか！　ぷにょにょですか！　最上の言葉をありがとうございます！」
　アケーチはゼリンを抱き締めた。艶やかな身体を摩り、頬を押し付ける。
「ゼリンたんは愛らしさの象徴なのです！」
　アケーチとゼリンは共に互いを求めた。

　日は落ちて空に星が瞬く。
　アケーチとゼリンは星空の下、寄せては返す波の音を聞いていた。
「ぷにょ」
　胸に抱いたゼリンが羽を広げる。アケーチは儚い笑みを浮かべた。
「……お別れの時間ですか。とても短く感じられました」
　撫でられたゼリンの目が潤んでいた。ゆっくりと浮上を始める。
「お元気で、ゼリンたん」
　アケーチは言葉を贈った。ゼリンはくるりと背を向けて空に昇っていく。身体は小刻みに震えていた。
「ゼリンたん！　また……会えますように！」
「ぷにょー！」
　感情を込めた鳴き声が降ってきた。
　ゼリンは空の星に紛れていった。

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あとがき

担当マスター：黒羽カラス
ファンレターはマスターページから！

天界から落っこちてきたゼリン達は無事に帰ることができました。
皆さんの優しさのおかげで楽しい時間を過ごせたことでしょう。
天界の生き物なのでカンが良いと言いますか、何となく言葉を理解している個体もいました。
ＰＣさんの声や表情で読み取っていたのかもしれませんね。

愛らしいゼリンの姿に私も抱き締めたくなりました！
ゼリーが食べたくなりました！　無かったのでグミを食べました！
焼きマシュマロを頭に浮かべて夜食をかなり食べました！
書く程にお腹の減るリアクションでした、はい。

ゼリンの体型と同じで話は丸く収まりました。
参加してくださった方々のおかげです。
ありがとうございました。

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