ゼリンといっしょ｜リアクション

ゼリンといっしょ

　星ヶ丘の瀟洒な家並みを愛でながらアケーチ・タッマーキは散歩を楽しんでいた。
　光を吸い取るような漆黒のスーツを着ていた。ネクタイはなかった。白いシャツの上部のボタンを外し、見た目の堅苦しさを和らげていた。
「建物の作りが素晴らしいですね。どのような人がお住まいなのでしょうか、ふふ…！」
　前髪に隠れていない紫色の左目に笑みが浮かぶ。自身の頬に手を当てて、うっとりとした様子で眺める。
　足が止まった。一度、軽く身を震わせた。
　右手の方向に顔を向ける。生垣の上に白くて丸い物体がいた。一対の羽を広げた状態でアケーチを見詰めていた。
「不思議な生物さんですね、ふふ」
　綱渡りでもするかのように足を前後に揃え、両腕を水平に開いた。
「不思議生物さんのねっとりとした視線、私がしっかりと受け止めました。遠慮はいりません。この胸に飛び込んできてください、ふふ！」
　白い物体が羽ばたく。口の両端を上げてアケーチの胸に飛び込んだ。
「ああ、何という感触なのでしょう」
　白い物体を掌で撫で回す。一部に紫色の痣のような物があった。ハートの形に見える。
「私の目の色と同じですね。運命を感じます、ふふ…！」
　アケーチは白い物体を胸に抱え、ゆっくりと歩き始めた。

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