携帯戦記カプセルギア　外伝『ダンサーズ・デッドエンド』｜リアクション

携帯戦記カプセルギア　外伝『ダンサーズ・デッドエンド』

《司令官殿！》
「あぁ、高台近くまで行けば地面も硬いだろうしダッシュしやすい！」
　ダイバーと源次の声に、クミだけではなく共に戦っているメンバーも頷く。だが、バレてはしょうがない、とでもいう様に超音波攻撃が２体を襲う！
「まちやがれですっ！」《やらせませんっ！》
　キリエとセラフの声が重なる。超音波をボディで庇えば、三対六枚の翼が照明に輝く。
「そこだっ！」
　菫が最大出力とばかりに気合を込める。隙から現れたのは、肉厚な剣をもったユサールだ。近くの岩を踏み台にし、ここぞとばかりにβ＆Θに襲い掛かる。
　しかし、相手は怯まず頭上から襲い掛かるユサールへと冷気をぶつけた。押しやられたユサールはどうにか体制を整えなおすが、菫は片腕の動きに違和感を覚えた。
《このぐらい、かすり傷だ》
（おぉ、ユサールも喋りだしたぞ。しかも想像通りのいぶし銀を思わせる軍人だなぁ。でも、右腕が気がかり……）
　菫は内心で感心しながらも、キリエにアイコンタクト。彼女はすぐさま下がってきたユサールに補給を施す。その間に、β＆Θは足で砂ぼこりを立てると、闘争を始めた。しかし、ST93と（ステルス状態の）エクリプスが追う。
「ふにゃあ、熱いねぇ……」
　額の汗をぬぐいながら菫が言う。
《これからが正念場だ。菫殿は大丈夫か？》
　心配そうに問うユサールに、菫は大丈夫だ、という様に頷く。傍らでは「無茶すんなですよ！」とキリエがくぎを刺していた。
《こちらは、まだまだ大丈夫です。補給に守備に頑張れますっ！》
「だけど……無茶だけはすんじゃねーですよ」
　甲斐甲斐しくユサールの治療をしながら、キリエが言う。菫は感謝の気持ちを込めてキリエへと笑いかけた。

　γを追っていた５体（と５人）は、空と地上から迫っていた。
　最初に異変に気付いたのはヒョードリだった。グリフィージスと共に飛んでいたヒョードリは、住宅街の一部に揺らぎを見つけた。
《おや？　あれは……？　頭隠して尻隠さずだね？》
「！　でかしたです、ヒョードリ！　みんなっ、あそこにいやがるです！」
　ヒョードリの声に反応し、ひよどりが指さす。その近くでは、丁度いいタイミングでスターライトナイトが調査していた。
（姿は見えにくいけど、全部消えてお化けみたいに出てくるわけじゃねえんだ。集中しろ、俺！）
　竜世はひよどりが指さした場所を見、わずかに街路樹の葉やガラスが震えているのを見つけた。そして、うっすらとした影がスターライトナイトを襲う！
（かかったっ！　修行のせーか見せてやろうぜ！）
　竜世がにやり、と笑う。瞬時に放たれるはスターライトナイトのフレイムチャージ。一瞬だけ姿を現したγは炎にひるむものの、すぐさま逃げたスターライトナイトを追う。
《炎とは小癪な！　切り刻む！！》
《悔しかったらここまできてみな！》
　腹を立てるγ、挑発するスターライトナイト。その様子に竜世は思わずくすり、と笑い……ちらりと主催者のチヒロを見た。チヒロはバイザーを深くかぶっているため口元しか見れないが、その動きから相手も楽しんでいるように見えた。
（……まるで……、子供みたいだ）
　なぜかそう思う竜世だが、すぐさま意識をギアに戻す。慎重に進めねばならない。スターライトナイトは徐々に砂浜へとγを誘っていく。
《西の方角より、２人分の動きをキャッチしました！》
　サニィの言葉に、タイラは目を見開くと玲音と頷き合う。そして、バルティーグルとサニィがγの前に……！
《覚悟せよ！》
　ぐるぁあああ、と白虎が吠えたかと思えば、音を立てて泥が降り注ぐ。翼で急旋回したスターライトナイトが、砂と海水を混ぜてひそかに作っていた泥だった。
《ぐっ……！》
砂をぼろぼろこぼしながらγの姿が現れた。どうやら、光学迷彩を解除させたようだ。それでも、γは翼を広げて切りかかる。
《速さなら負けないよ！》
　サニィが背中のバックパックブースターを唸らせ、γの攻撃を避ける。同時にまいたのはトリモチバルーン。妨害アイテムだ。
《小癪な！》
　γは翼を自在に操って３体のギアを壊そうと襲い掛かるも、ヒョードリとグリフィージスも迫る。