携帯戦記カプセルギア　外伝『ダンサーズ・デッドエンド』｜リアクション

携帯戦記カプセルギア　外伝『ダンサーズ・デッドエンド』

「少なくとも、あのαは機動力の高さで敵を翻弄して、ヒット・アンド・アウェイで攻撃するタイプに見えるね」

「そうだね」
　的子が頷くと、ネオムがわずかに振り返る。
《普段通りにいこう、マトコ》
「……！　うん！」
　彼の言葉に的子が力強く頷く。蒼がきょとんとしたものの、すぐに我に返り状況を見極める。今の所ブルズがαを引き付け、道化師型のギアがするすると様子を見ながら移動している。
　蒼のギア・Diablo Azulは、南方へ向かっていた。β＆Θの動きも気がかりだが、自分のギアが有利に動ける場所は砂浜か、ステージ南方の高台だろうと考えたのだ。
（このギアは、中～長距離の砲撃戦に長ける半面、接近戦ではやや不利という火力重視の仕様なんだよね。……ちょっと相性悪いかな？）
　考えながらも、指が動く。ブルズを振り切ったαの攻撃がDiablo Azulに迫る。
《追いつかせると思ったかっ！》
「今は逃げるが勝ちっ！」
　ぱぱっ、と指が閃き、Diablo Azulは間一髪でαの攻撃を避ける。入れ替わるように１体のギアが手にした武器を振るってαを下げる。煌白燕のギア・サンゴクナイトである。
（腕がなるな……っ！）
　白燕が武者震いを感じていると、サンゴクナイトが僅かに笑ったような気がした。
《勝利を我が主の元に！　行こう、我が主よ！》
「えっ？！」
　急に聞こえた声に、白燕は目を丸くする。だが、次第に嬉しさが込み上げていた。
「そなたは、私を『我が主』と呼んでくれるのか？！」
　彼女の言葉にこくっ、と頷くサンゴクナイト。白燕は、びしっ、とαに指を突きつけた。
「行くぞ、サンゴクナイト！　突貫だ！」
《御意！》

　白燕が【A.I.C.O.】を動かし、サンゴクナイトが突貫する。青龍偃月刀を振り上げ閃かせる姿はとても勇ましい。
　サンゴクナイトが猛攻をかける間に、ブルズもまた背後から突進する。それに対し、αは角を伸ばして応戦の意思を見せた。２体の猛攻を角で追い払い、別の道へと入る。そんな様子を、道化師が物陰から観察していた。新田樹のギア・Mrクラウンだ。
（その隙に移動かな～）
　樹はブルズとサンゴクナイト、αの動きをよく観察しMｒクラウンを移動させる。隙をついて麻痺毒つきのナイフを使うつもりだ。本当は前もって味方の武器に麻痺毒をつけてもいいかと聞きたかったが、その時間がなかった。
「あの敵は接近戦が得意と見た。……射撃にはどうだろうか」
　白燕が首を傾げれば、蒼がくすり、と笑う。
「射撃なら任せて。どうにか海辺まで出れば……」
「遊撃ならこっちの十八番だよ。ね、Mrクラウン？」
　樹がそういえば、Mrクラウンが胸に手を置き、恭しく一礼する。だが、敵に向けた眼差しは嗜虐的に見えた。
《突進が得意なようですし、うまく引き付ければ……》
《だが、相手も相当な手慣れとみた方がいい》
　Mｒクラウンの言葉に、ネオムが忠告する。それにサンゴクナイトもまた同意する。
《我が、引き付けよう。そのうちに隙をついてくれ》
　サンゴクナイトの言葉に白燕が目を細めα対応に動く面々に言う。
「サンゴクナイトやそこの牡牛ロボを見てほしい。一撃でもダメージは大きそうだ。慎重に、な」
「あの角の一撃が掠っただけで深い傷ができているね」
　白燕の言葉に、全員が頷く。的子はサンゴクナイトとブルズの負った傷を見、わずかに胸が痛んだ。
　それでも、αは止まらない。彼は注意深く南へ進もうとするDiablo Azulへと角を振るう！
（予想以上に……早い！）
　蒼が回避を試みるも、β＆Θの冷気攻撃が迫る。わずかに凍るDiablo Azulの足元。【A.I.C.O.】の操作がきかず、蒼は焦りを覚えた。が、その時！　数本のナイフがαを襲っていた。音もなく忍び寄っていたMrクラウンが放ったものだ。
　αは冷静にそれを避けるが、その間にDiablo Azulは氷を砕いて姿をくらましていた。
《避けられてしまいましたか》
　と悔しそうな声がした時にはαの背後からナイフで切り付けている。αは後ろ足を跳ね上げてMrクラウンを蹴とばし、入れ替わるようにサンゴクナイトが切りかかる。