携帯戦記カプセルギア　外伝『ダンサーズ・デッドエンド』｜リアクション

携帯戦記カプセルギア　外伝『ダンサーズ・デッドエンド』

《こちらで時間を稼ぐ。布陣を》
《させるか！》
　サンゴクナイトとαが火花を散らし、一瞬だけ白燕は主催者と目が合った……気がした。
（っ！　これは覇気か？　プレッシャーが強い！）
　わずかに操作が疎かになるも、その隙に援護射撃を入れるネオム。
「今は目の前に敵に集中しよう」
「そう、だな」
　的子の言葉に、白燕は頷く。少し離れたところではくるっ、とバク宙を決めたMrクラウンが樹を見つめていた。彼は少し申し訳なさそうに主へ問いかける。
《少々苦戦しそうですが、お覚悟は？》
「そうでなきゃ面白くないよ。あとでお手入れしっかりするから、がんばって！」
《お嬢様のご命令とあらば》
　樹はスリルを愛する少女だ。今の状況だってそれなりにわくわくしている。ニヤリ、と笑って答えた樹に、Mrクラウンは優雅に芝居がかった一礼をした。

　一方、二首の狼、オルトロスの姿をしたβ＆Θが南の高台から超音波を放ってくる。Diablo Azulが向かっているのを知っているのか、一方の首は市街地方面を向いている。
（場所が分かりづらい。でも、今は、……伏せるとき）
　スピカ・フォーツは試合開始早々、ギア・エクリプスを飛行させる。同時にEシールドと光学迷彩を使って姿を隠し、尚且つ左腕部圧縮波動砲2のチャージを開始する。
「さっきは間に合わなかったけど……今度は通さないですよっ！」
　キリエ・オーラティオがきっ、とβ＆Θがいるだろう場所を睨みつける。彼女のギア、ディヴァインセラフ（以下セラフと表記）はエクリプスを超音波から守っている間に冷気を別の仲間へと打たれた事を悔やんでいた。
《でも、向こうもどうにかなったようです。エクリプスを庇えただけでもよしとしましょう》
　セラフに言われ、キリエは「そうですね」と少し悲し気に頷く。再びくる超音波をボディで防ぎ、エクリプスや下にいる若宮菫のギア・ユサールＢ３カスタム（以下ユサールと表記）を庇う。
「危ないと思ったらこっちに着やがれですっセラフの後ろへは通さねーです！」
《私が、みんなを守ります！　キリエ、共に神の威光と、私達の揺るぎない正義を示しましょう！》
「！？　それ、キリエが言おうと思ったセリフですよぉ！」
　と、まぁコントのようなやり取りをしていても息の合った動きで超音波から仲間を守る姿に、「ほぉ」と主催者の口元と指が動いた。
（これはこれで、いいコンビだな。実にいい）
　チヒロが何を考えているのか。それは、今の所誰にもわからなかった。だが、キリエは、少しだけ背筋が冷たくなった気がした。
（少し離れるです、セラフ！）
　彼女はその予感のままに、ユサールとエクリプスから少し距離を置き砂浜方面へと隠れながら進み始めた。

　空挺兵を模した陸堂源次のギア・カオスダイバー（以下、ダイバーと表記）は砂浜付近で敵を捜索していた。攻撃が高いところからきているのはわかっている。だが、正確な位置が分からないのだ。
　傍らには鈴島クミのギア・ST93（通称ガラクタくん）がおり、一緒に敵を探している。
「ここ、ガラクタくんは平気だよねー、軽いもん。でも、あとでメンテしなきゃねー」
　砂浜の上をしっかり歩くST93の様子をちらり、と見、源次は愛機ダイバーの足元をみて眉を寄せる。
「ここじゃローラーダッシュが生かしきれないかなぁ」
　そう、思わず呟いた源次に声をかけた者がいた。彼のギアであるダイバーだ。
《司令官殿。いつも通り創意工夫、あらゆる戦術を駆使すれば勝てるでありますっ》
（えっ？！）
　思わぬ出来事に、源次は一瞬だけ戸惑う。クミはちらり、とダイバーとST93を見つめる。
「え？　ダイバーが喋った！？　ガラクタくんも喋るかなぁ？」
（ひょっとして新しい仕様かな？　でも今は戦いに集中しよ）
　だが状況を瞬時に察知し、源次は平静を保ってバトルステージに意識を向けた。敵の姿が見えないのならば、探せばいい、と。
（頭部パーツ、イントルーダー使用！）
《索敵開始》
　【A.I.C.O.】を操作する手と、ダイバーの声が重なる。意識を集中していると、まるでダイバーの視界とリンクしているような錯覚を覚えるが、それ以上に南方の岩場にいるのを見つけ、胸が高鳴ったことで我に返る。