＜七福猫シリーズ＞大黒猫を探せ編｜リアクション

＜七福猫シリーズ＞大黒猫を探せ編

●恵比寿猫を探す大黒猫を追いかけて

　大黒猫を探すのに特に必死だったのは、毒を吐きそうになるのを堪え、舌打ちする佐藤瀬莉だった。
　アリス・ミーティアが作ってくれたブルーシートのポンチョで胸元を隠すことはできるが、下半身全体までは隠せない。
　走るたび、気にしている部分が見えてしまうのではないかという羞恥心が、瀬莉をより執念深くさせた。
「あの真っ黒な猫みたいな石像が大黒猫なのかな？」
　アリスが見つけたものをじっくりと見て、瀬莉は「あいつだ！」と憎き相手を見つけたのでグッと拳を握る。
（元の姿に戻るまで、何度でもツッコミを入れてやるんだから！）
　猛スピード大黒猫にツッコミを入れるべく突撃する瀬莉を見て、大丈夫かねぇ？　と心配する曖浜瑠樹。
「ここであったが百年目！　見つけたわよ、大黒猫！」
　普段の愛らしい表情と打って変わり、ワイルドな笑みを浮かべてピコピコハンマーを構え容赦なくツッコミを入れようとするが
　
　――邪魔すんなや！

　スルーされてしまった。
　恥ずかしい思いをさせられたうえ、無視されたことで瀬莉の怒りは頂点に達した。
「もう許さない！　倍返しで突っ込んでやるんだから！」
　待ちなさい！　と大黒猫を追いかける。
「大黒猫、すごく恵比寿猫のことが好きなんだね」
「そうみたいだねぇ。大黒猫さん、オレが見つけた時よりも少しスピードが落ちてる気がするねぇ」
「え？　あれで少し遅くなっているの？」
　その前はどのくらい早かったの！？　と驚くアリスだったが、今は、我を忘れかけている瀬莉を落ち着かせることが先だ。

　漁港付近に辿り着くなり、八神修と椿美咲紀は、ものすごい勢いで突っ込んでくる黒い何かと遭遇した。
「あれが大黒猫か」
「騒動のあるところ、大黒様ありなのですよー！」
　その証拠に、大黒猫が通り過ぎた後は穴だらけ。小槌をぶん回しながら移動した証拠である。
「大黒猫さん、これ以上の、おいたはあきませんやーん！」
　飛び跳ねて大黒猫に近づき、ピコピコハンマーでツッコミを入れようとした美咲紀だったが転倒して失敗。
　その拍子に、ピコピコハンマーは地面に叩きつけられると同時にハンマーのピコピコ音が鳴った。

　――アホやなあ。わてにツッコミ、入れられるもんなら入れてみい。

　美咲紀の失敗が面白かったのか、ププッと笑い、小馬鹿にしたような態度でＵターンして移動する大黒猫。
　その様子を見た修は、大黒猫の気持ちが怒りから少しそれたような気がした。

「あの方角は寝子島駅の近くだ。漁港付近で足止めしないと、かえって目立ってしまう」
　辺りに人が増え始めてきたので、これ以上の騒ぎは非常にまずい。
　これは映画撮影です、この人達はリアクション芸人なんです！
　そう誤魔化しても、カメラを探す野次馬もいるだろう。騒ぎが大きくなる前に、大黒猫のお怒りを鎮めねば。
「恵比寿様の居場所はわかっているんでしょ？　だったら、少し皆で大黒猫様と遊びましょ」
　大黒猫に馬鹿にされても、美咲紀はこの状況を楽しんでいる。
　これ以上、漁港付近で暴れられないよう気を付ければ大丈夫！　とツッコミ満々。
「皆で協力すれば、大黒猫を大人しくさせることができるはずだ。急ごう」
　寝子島駅周辺で暴走されてしまっては大変だ。そうならないよう、大黒猫を突っ込んだ皆は後を追いかけた。