＜七福猫シリーズ＞大黒猫を探せ編｜リアクション

＜七福猫シリーズ＞大黒猫を探せ編

●聞き込みをするウサギペア

　漁港には、市場で買い物をしたり、漁港で仕事をしている人の姿が。
　聞き込みをしようとした時、修は、楽しげに歩いている椿美咲紀に出会った。
「シュー君、何してるの？」
　頭に白いウサギの耳がついているが、お尻の尻尾は隠れているのか見えない。
　ヘッドが空気で膨らんでいるビニール状のポップな色彩のピコピコハンマーを持っている美咲紀は、修が何かしているということは、記事のネタになりそうなことが起きる予感とワクワクした。
「恵比寿猫から、大黒猫を探すよう頼まれたんだ。ピコハンで突っ込んでおとなしくさせてほしいと」
「よーするに、大黒猫さまは怒りで我を忘れて暴れちゃっているのですね。これで突っ込んでいいのですね」
　ツッコミは関西人のサガなのです！　と長さ３０センチ程のカラフルな水玉模様のピコピコハンマーを振る。
「美咲紀、三重県出身だろう。三重県は関西じゃない」
「関西ちゃうて？　んなお堅いこと言わはらず。関西圏の端っこに加えてくれてもええですやん」
　大黒猫様見つけたら「おいたはあきませんやーん！」とツッコミを入れたくて仕方がないようだ。
　その証拠に、ウサギの耳は、音楽に合わせて動く花のオモチャのように激しく揺れている。
「美咲紀も一緒に、聞き込みするか？」
「モチのロンや！」

　聞き込み中、修は上着と帽子を外し、ウサ耳、ウサギ尻尾の姿で堂々と漁港周辺を歩いている。
　ここで得た情報は、魚市場で競りが行われる前の時間帯、得体のしれない何かが周辺をうろついている。
　魚市場の壁に猫っぽい形のへこみができた。えびちゃん、という中年男性のような声が聞こえた、ということだった。
「何で、そんな格好してるんだ？」
　漁業組合のおじさんにそう言われたので「映画撮影のためなんです」と、修は誤魔化した。
　そのための仮装と納得したおじさんは、それ以上、何も言わなかった。

　次は『うみねこ』で魚戸夫妻に聞き込みを。
　店の前には、腕組みをしてどうしたもんだという顔をした魚戸ケンゾウと困った表情の魚戸ハルコがいた。
「どうしたんですか？」
「おう、修か。これ見てくれ」
　ケンゾウが指差したところを見ると、そこには、たくさんの穴が開いていた。
　大黒猫が起こした『うみねこ』の被害は、既に魚戸夫妻に知られていた。
「ケンゾウさん、ハルコさん、大黒猫について何かご存じありませんか？」
「寝子島駅の前の恵比寿猫のような石像なんやけど」
　修と関西弁が抜けていない美咲紀が尋ねると、魚戸夫妻は知らないと言う。
「この穴ですけど、俺の友達に手伝ってもらって直します。それまで、何かで穴を隠してくれませんか？」
　大黒猫のしわざとは、さすがに言えない。このことは内緒にしておこう。
「新装開店の時みたいに直してくれるんなら、そうしよう」
　彼には、その時に世話になったので言うとおりにすることに。

　友人達が大黒猫を探しているだろうと修はねこったーを検索すると、それに関するつぶやきがいくつか。
　皆、頑張っているんだなと感心し、自分達が得た情報を書き込む。
「大黒猫は漁業周辺にいる可能性あり。捜している人はここに集合、と」
　早く見つけるのは、多くの人手がいる。これで、少しは見つけやすくなるいいのだが……。