＜七福猫シリーズ＞大黒猫を探せ編｜リアクション

＜七福猫シリーズ＞大黒猫を探せ編

●着ぐるみ君とバニーさん

「まぁ、これは、いつものやつよね」
　赤い蝶ネクタイにタキシード、黒のストッキングに真っ赤なハイヒール。
　カジノにいそうなバニーガール姿になった橘千歳だったが、神魂の影響とすぐ理解したので冷静だった。
「カジノのことはあまりよく知らないけど、これは結構恥ずかしいな。取りあえず、今のこのおかしな状況なんとかしないとね」
　千歳だけでなく、一緒にいた小山内海もバニーガールに。
　海は肩出しボディスーツに丸い尻尾の飾り。
　頭にウサ耳ヘアバンド、両手にカフス、素足にヒールとやや大胆な衣装に。
『だいこくねこさん、ねこなのに、うさぎずき？』
「さあ」
　可愛い衣装だが、ボディスーツのＶラインの角度が急だ。
　際どくてちょっと恥ずかしい、と海は俯き加減で顔を赤らめる。
『ちとせのバニーすがた、かわいい』
　自分と違ってストッキングを履いているが、スタイルが良いので、海はちょっと羨ましかった。
『すっごく、にあってる』
「ありがとう。でも、なんか、こそばゆい感じだわ。海ちゃんのも、可愛いと思うけど」
　
　バニーガールになった千歳と海を見て、御剣刀は大黒猫の影響でこうなったのか！？　とビックリ仰天！
　……かと思いきや、心の中で猛烈に感動していた。
（大黒猫様、ありがとうございます、ありがとうございますっ！！　普段から仲良くしている女の子のバニーガールは最高だ！）
　男としてはいろいろとしたくなるが、そんなことをしたら、お巡りさん事案になりかねない。
　それは勘弁、我慢だ！　ちょっとだけでもダメか？　と悶々状態で、自分はどんなウサギなったのかを確認。
「……何で俺はウサギの着ぐるみなんだ？　海や千歳は可愛いバニーなのに、俺だけこれかよ！」
　そもそも猫じゃねえのかよ！　と不満を口に。手にしているピコピコハンマーを見て、更に突っ込む。
「このハンマー、なんというか、餅つきの杵にしか見えないんだが……餅つかないヨ？　つかないヨ！」
　どう見ても、刀は月でお餅をつくウサギだった。
「どうしたの？　急に前に屈み込んで。お腹でも痛いのかな？」
　情けなくなり、しゃがみ込んでしまった刀を気遣う千歳。
『かたな、きぐるみなんだ。きぐるみ、かわいいとおもう』
「自分だけウサギの着ぐるみだから、刀君、落ち込んだのかしら？」
　男の俺がバニーガールだと不審者だと思われるだろう……と、落ち込みながら心の中でぼやく刀だった。

『とにかく、だいこくねこさん、さがそう。これで、たたく』
　海が持っているのは、すごく大きいピコピコハンマー。大きさに反し、重さは感じない。むしろ軽い。
『なぐって、いい？』
「神社で育った身としてはかなり抵抗感があるけど……でも、このままにしておく訳にもいかないものね」
　恵比寿様は叩いてもいいと言ったが、千歳は申し訳ない気分に。
　だが、放っておくと大黒猫はお怒り状態のままで暴れまくるので鎮めねば。
「大丈夫だろう。大黒猫は頑丈だと恵比寿猫も言っていたし」
　いつまでも落ち込んでいられない、と立ち直った刀は、ピコピコハンマーを握りしめて動き出す。
　
　その頃。
　頭のウサ耳、お尻の尻尾を上着と帽子で隠した八神修は、恵比寿っぽい服と鯛の模型。
　演劇用の巨大ピコピコハンマーを借りにレンタル店に行った。
　借りたピコハンに、剥がせる黒いテープで「１００ｔ」「撮影中」と側面に書く。
　神魂の影響を受けていない人に、自分達がウサギ姿なのは映画撮影のためと思わせる作戦だ。
「映画監督っぽい帽子を借りたのは正解だった」
　準備完了、と、修は漁港周辺で聞き込みを。

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