＜七福猫シリーズ＞大黒猫を探せ編｜リアクション

＜七福猫シリーズ＞大黒猫を探せ編

●ウサ耳さんの捕獲作戦

「大黒猫さん……早く見つけてあげたいねぇ」
　やや癖毛の頭にはウサギの耳、お尻にウサギの尻尾が生えた遠野まほろは、大黒猫が恵比寿猫を必死に探しているのは寂しいからだと思った。
　仲良しの恵比寿猫が見つからない苛立ち、寂しさが、今回の騒動の発端なのだろう。
「ニ柱一組で商売の神様だし……。うん、早く会わせてあげたいし、頑張ろう」
　漁港周辺に来ては見たものの、大黒猫らしき石像は見当たらない。
「このお店の前……穴がいっぱいあいてるねぇ」
　たまたま通りがかった大衆食堂『うみねこ』の周りは、穴がたくさん開いている。
　危ないから穴を埋めたほうがいいかな？　と思ったが、大黒猫が見つかれば元に戻るかもと大黒猫を探しを。

　黒ウサギの耳と尻尾がついている綾辻綾花は、周囲の音や声が、いつもより良く聞こえる気がした。
　大黒猫の一件は、恵比寿猫から話を聞いたので事情は把握済み。
　恵比寿猫が困っているようなので、大黒猫探しを引き受けた。
　『うみねこ』に被害が出ないよう、早く大黒猫を見つけるべく漁港へ。
　猫っぽい形のへこみが漁港にあるというので、その現場に行き、さっそく大きさを確認。
「これが、大黒様の大きさなのでしょうか」
　へこみの大きさは、推定で１００センチ前後。だとしたら、少し大きめの石像だろう。
　ここにはもう来ないと思うので、他の漁港付近を探すことに。
　その前に、漁港にいる猟師に頼んで網を貸してくださいと頼む。
「大事なものを探すのに必要なんです、破れているもの、使えないものでもいいですからお願いします」
　必死に頼むので、よほど大事なものを探すのに必要なのだろうと思った猟師は、使い古しで良ければと貸してくれた。
「ありがとうございます。お返しする時は、また使えるように直します」
　借りられて良かった、と大黒猫がまだ来ていないと思われる場所に、広げた網を重ね合わせたものをパイプに括って、動きを止める罠を作り始めた。
（通ると網に絡まるように、何か所かに分けて仕掛けないと）

　どこかな……と、まほろが漁港付近を歩いていると、ひとりで罠を仕掛けている綾花を見かけた。
　大黒猫を捕まえるのだろうと思い、手伝うことに。
「大変そうだね……私、お手伝いしていいかな？」
「手伝ってくれるんですか？　ありがとうございます」
　これで少しでも多めに仕掛けられます、と、まほろの申し出は大助かりだった。
「これで何を……？」
　まほろが尋ねると、大黒猫を足止めするんですと綾花が罠について説明した。
「あなたも……大黒猫さんを探しているのかな？」
　恵比寿猫に頼まれて探していると言うまほろに、私もなんです、と同じ境遇であることを話す綾花。
「うみねこさん、大丈夫でしょうか？」
「うみねこ……？　お店の前に……穴がたくさん開いていたお店かな？」
　もう被害が出ていたんですか？　と綾花は驚いた。
「それだけですか？」
　まほろに問い詰めると「それだけ……」と答えたので一安心。
　うみねこの壁、あるいは店内に被害が及べば、とても営業どころではない。
「あのお店が壊されてしまっては、美味しいかき揚げが食べられなくなります。早く大黒猫を見つけましょう」
「恵比寿猫さんも……心配しているから早く探そうねぇ」

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