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猫鳴館、自治会長選任戦1370春 ～天使の羽選手権
●天使の羽選手権・３
五番手は雨崎 荒太郎。
猫鳴館の古参メンバーとなりつつある荒太郎は、普段親しい地下帝国皇帝（瓢）側から寝返ったことを、座敷童子ルックを脱ぎ捨ててアピールする。
その恰好は……水褌一丁！
深紅の水褌の長い裾は、畳んで両手で抱えている。
水泳部で鍛えた胸囲88cmボディには、マジックで『朱蘭ファイト！』の堂々たる文字。
「ふっふー。じつは朱蘭ちゃんを応援して、飛び方コーチしてましたがんす！」
「……そう来たかい」
瓢はにやにやと荒太郎の飛ぶのを見守っている。
荒太郎はコーチの合間に、自分の羽根づくりもぬかりなく行っていた。
山で採った竹を細く切ったフレームに鶏舎でひろった尾羽根をヒントに角度を調整した翼は、見える角度で色味の変わるスプレーでカラーリングしてある。シンプルな形状の翼は、素の肉体に見事にマッチしていた。
崖の上に立った荒太郎は、大声で吠えて、力いっぱい地面を蹴った。
「朱蘭ちゃん！ このざしきわらしが味方するがんすーっ」
空に飛び出す。翼が太陽の光を受けてキラキラと黄金色に煌めく。
荒太郎は畳んだ水褌を放した。
薔薇の花のように真っ赤な水褌は、空中でぱっと開いて長くたなびく。
そこには、荒太郎渾身の応援の言葉が書かれていた。
『朱蘭ちゃん、がんばるがんすよー！ 負けるなー』
それを見た朱蘭（酒抜き）は、思わず顔を赤らめる。
「ありがとうございます……でも、ちょっと恥ずかしい……あっ」
「あ～～～れ～～～～」
荒太郎が落ちてゆく。風向きが変わって、煽られてしまったらしい。錐揉み状に落ちる間、翼は黄金から赤へ、そして青へと目まぐるしく色を変える。
「わーーー！！」
ざっぽーんっっ！！
上がるは白い水しぶき。しかしさすが水泳部、荒太郎はしぶきの中からすぐに顔を出すと、近くにいたアヒルさん号へ向かってすーいすいと平泳ぎ。
「お疲れさま、１８メートルだったよ」
洋二に告げられ、荒太郎は悔しがった。
「ごめーん、朱蘭ちゃん！ もうちょっと飛びたかったー！」
◇
荒太郎が寝返った（？）こともあって、ここまで瓢を応援する者がいなかったが、とうとう彼が現れた。
そう、入学当初からの悪友ともいえる元自治会長、邪衣 士その人である。
修がコメントを求めると、士曰く。
「骨削 瓢は古参中の古参で選任戦にも必ず出馬している。個人的な贔屓目ありにしても今回の候補者の中では……一番問題ある奴じゃね？」
こくこくこく、と頷く者多数。でも、だからこそ怖いもの見たさというか、どうなるかわからない面白さを期待してしまう猫館生もいる。
「三度目の正直。俺は骨削を応援する。何かやらかしそうになったら……いや、当選したら間違いなく絶対どこかでやらかすと思うが、その時は俺が補佐するさ」
元自治会長の力強いサポート宣言に、猫館生たちは大いに沸く。
しかし、もっとも大きな歓声が上がったのは、士が熊皮の羽根をばっと背負った瞬間だった。
元自治会長＝熊は健在である！
「いくぞ」
士の翼は、向かい風を受けて加速できるデザイン。
向かい風を狙いすまし、崖を蹴る。
風を受けた熊皮は、羽というよりムササビの袋か蝙蝠のようでいささか不格好であったが、狙い通り向かい風の中を進んでゆく。
（高度が落ちてきた）
いや、ここからが勝負だ。
猫鳴館生の粘り、見せてやる。
歓声が聞こえる。あれが猫鳴館の声だ。自分や瓢が生きてきた場所の声だ。
粘って、粘って。
（く、ここまでか）
水面に滑り降りる。
落ちた衝撃で翼が外れた。士は仰向けになって湖に浮かびあがった。青い空が広がっていた。
カモさん号が近づいてきた。夏朝が投げた浮き輪に掴まる。
「４４メートルです」
莉鳥の声がした。
◇
「五番手と六番手は、地下帝国な方々でしたのー。まず雨崎荒太郎さん！ デザイン点はー？」
泉先生が７、茂が９、鳶色彦が７の札を上げる。
「海原センパイ、やっぱり水褌がポイント高かったのなの？」
「うむ。いや……ゴホン、それだけじゃなく、竹をフレームに使ったり、鶏舎でひろった尾羽根を参考にしたりと実に猫鳴館らしかった」
「まったくですなの！ 続いては、あかりの前任、邪衣士さんはどーでしょー？」
すると、泉先生が８、茂が８、鳶色彦が７の札を上げた。
「泉先生、どうでしたかなの？」
「向かい風に向かって、というのが粋じゃないか。敢えて熊皮を使ったというのも個性を感じる」
「はーい、ありがとうございましたなのー！」
修がボードの点数を書き換えてゆく。
骨削：合計 ６７点：内訳 ６７点（邪衣）
酒浸：合計１６５点：内訳 ７０点（近石）＋５３点（鈴野）＋４１点（雨崎）
ミミ：合計１４１点：内訳 ６２点（神野）＋７９点（サキリ）
「現時点では酒浸が先行している」
解説する修の顔がモニターに大写しにされた。
「だが、ここからは候補者自身が飛ぶ番だ。候補者は点数が倍になる。まだ勝負の行方は分からないぞ」
五番手は雨崎 荒太郎。
猫鳴館の古参メンバーとなりつつある荒太郎は、普段親しい地下帝国皇帝（瓢）側から寝返ったことを、座敷童子ルックを脱ぎ捨ててアピールする。
その恰好は……水褌一丁！
深紅の水褌の長い裾は、畳んで両手で抱えている。
水泳部で鍛えた胸囲88cmボディには、マジックで『朱蘭ファイト！』の堂々たる文字。
「ふっふー。じつは朱蘭ちゃんを応援して、飛び方コーチしてましたがんす！」
「……そう来たかい」
瓢はにやにやと荒太郎の飛ぶのを見守っている。
荒太郎はコーチの合間に、自分の羽根づくりもぬかりなく行っていた。
山で採った竹を細く切ったフレームに鶏舎でひろった尾羽根をヒントに角度を調整した翼は、見える角度で色味の変わるスプレーでカラーリングしてある。シンプルな形状の翼は、素の肉体に見事にマッチしていた。
崖の上に立った荒太郎は、大声で吠えて、力いっぱい地面を蹴った。
「朱蘭ちゃん！ このざしきわらしが味方するがんすーっ」
空に飛び出す。翼が太陽の光を受けてキラキラと黄金色に煌めく。
荒太郎は畳んだ水褌を放した。
薔薇の花のように真っ赤な水褌は、空中でぱっと開いて長くたなびく。
そこには、荒太郎渾身の応援の言葉が書かれていた。
『朱蘭ちゃん、がんばるがんすよー！ 負けるなー』
それを見た朱蘭（酒抜き）は、思わず顔を赤らめる。
「ありがとうございます……でも、ちょっと恥ずかしい……あっ」
「あ～～～れ～～～～」
荒太郎が落ちてゆく。風向きが変わって、煽られてしまったらしい。錐揉み状に落ちる間、翼は黄金から赤へ、そして青へと目まぐるしく色を変える。
「わーーー！！」
ざっぽーんっっ！！
上がるは白い水しぶき。しかしさすが水泳部、荒太郎はしぶきの中からすぐに顔を出すと、近くにいたアヒルさん号へ向かってすーいすいと平泳ぎ。
「お疲れさま、１８メートルだったよ」
洋二に告げられ、荒太郎は悔しがった。
「ごめーん、朱蘭ちゃん！ もうちょっと飛びたかったー！」
◇
荒太郎が寝返った（？）こともあって、ここまで瓢を応援する者がいなかったが、とうとう彼が現れた。
そう、入学当初からの悪友ともいえる元自治会長、邪衣 士その人である。
修がコメントを求めると、士曰く。
「骨削 瓢は古参中の古参で選任戦にも必ず出馬している。個人的な贔屓目ありにしても今回の候補者の中では……一番問題ある奴じゃね？」
こくこくこく、と頷く者多数。でも、だからこそ怖いもの見たさというか、どうなるかわからない面白さを期待してしまう猫館生もいる。
「三度目の正直。俺は骨削を応援する。何かやらかしそうになったら……いや、当選したら間違いなく絶対どこかでやらかすと思うが、その時は俺が補佐するさ」
元自治会長の力強いサポート宣言に、猫館生たちは大いに沸く。
しかし、もっとも大きな歓声が上がったのは、士が熊皮の羽根をばっと背負った瞬間だった。
元自治会長＝熊は健在である！
「いくぞ」
士の翼は、向かい風を受けて加速できるデザイン。
向かい風を狙いすまし、崖を蹴る。
風を受けた熊皮は、羽というよりムササビの袋か蝙蝠のようでいささか不格好であったが、狙い通り向かい風の中を進んでゆく。
（高度が落ちてきた）
いや、ここからが勝負だ。
猫鳴館生の粘り、見せてやる。
歓声が聞こえる。あれが猫鳴館の声だ。自分や瓢が生きてきた場所の声だ。
粘って、粘って。
（く、ここまでか）
水面に滑り降りる。
落ちた衝撃で翼が外れた。士は仰向けになって湖に浮かびあがった。青い空が広がっていた。
カモさん号が近づいてきた。夏朝が投げた浮き輪に掴まる。
「４４メートルです」
莉鳥の声がした。
◇
「五番手と六番手は、地下帝国な方々でしたのー。まず雨崎荒太郎さん！ デザイン点はー？」
泉先生が７、茂が９、鳶色彦が７の札を上げる。
「海原センパイ、やっぱり水褌がポイント高かったのなの？」
「うむ。いや……ゴホン、それだけじゃなく、竹をフレームに使ったり、鶏舎でひろった尾羽根を参考にしたりと実に猫鳴館らしかった」
「まったくですなの！ 続いては、あかりの前任、邪衣士さんはどーでしょー？」
すると、泉先生が８、茂が８、鳶色彦が７の札を上げた。
「泉先生、どうでしたかなの？」
「向かい風に向かって、というのが粋じゃないか。敢えて熊皮を使ったというのも個性を感じる」
「はーい、ありがとうございましたなのー！」
修がボードの点数を書き換えてゆく。
骨削：合計 ６７点：内訳 ６７点（邪衣）
酒浸：合計１６５点：内訳 ７０点（近石）＋５３点（鈴野）＋４１点（雨崎）
ミミ：合計１４１点：内訳 ６２点（神野）＋７９点（サキリ）
「現時点では酒浸が先行している」
解説する修の顔がモニターに大写しにされた。
「だが、ここからは候補者自身が飛ぶ番だ。候補者は点数が倍になる。まだ勝負の行方は分からないぞ」
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2018年04月07日
- 参加申し込みの期限
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- 2018年04月14日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2018年04月14日 11時00分
