猫鳴館、自治会長選任戦1370春　～天使の羽選手権｜リアクション

猫鳴館、自治会長選任戦1370春　～天使の羽選手権

●結果発表、新たな自治会長は

「いよいよ、結果発表なのよーっ！」

　修がボードに点数を書きこむ。
　骨削：合計２７３点：内訳　６７点（邪衣）＋２０６点（骨削）
　酒浸：合計３２３点：内訳　７０点（近石）＋５３点（鈴野）＋４１点（雨崎）＋１５８点（酒浸）
　ミミ：合計２６５点：内訳　６２点（神野）＋７９点（サキリ）＋１２４点（ミミ）

「新たな自治会長は、酒浸朱蘭ちゃんに決定なのー！！」

　明里の声を受けて、修が酒浸の名前の前に、赤い花を貼った。
「おめでとう」
「えっ……！」
　一斉に注目を浴びた朱蘭はぱっと頬を朱に染める。
「あたしが自治会長……！？」
「そうなのよっ！　来てなの！」
　明里に手を引かれ、朱蘭は巨大モニターの前に引きずり出される。
　朱蘭の後ろのモニターの中に朱蘭が、その後ろのモニターの中にまた朱蘭が、と無限の朱蘭の顔が、照れ臭そうに、けれど希望に満ちた眼差しで猫鳴館生たちを見つめていた。猫鳴館生たちもまた、新たな自治会長を見つめる。
「おめでとう後輩」
　海仔の拍手を切欠に、あたりは温かい拍手に包まれていった。
「あ、ありがとうございます。皆のおかげです」
　そう言って頭を下げる朱蘭の手に、明里が古びた鍵束を握らせる。
「朱蘭ちゃんにはこの、代々自治会長によって引き継がれてきた『猫鳴館の鍵束』を渡しますなの」
　それからウィンクして。
「前の自治会長からの伝言。『あかずの間に毎月お供え物をするのを忘れないように』なの。ほかにも書類とか始末書とかあれやこれやあるから、これからゆっくり引継ぎしようなの」
「は、はい！　頑張ります！」
　明里はすうっと息を吸うと、集った人々に向かって最後の挨拶をした。
「今日はみぃんなが天使の日。あかりも天使をやめるつもりはないけれど、猫館のガーディアンエンジェルはバトンタッチするのなの。あかりがしっちゃかめっちゃかしたけれど、まだまだやり足りないところは、きっと新しい自治会長さんがうまくやってくれるのなの。みんなも協力よろしくなのよ！」
　わああっと明里の労を労う歓声と拍手が上がる。
　修が朱蘭にマイクを向けた。
「今の気持ちを一言」
　朱蘭の自治会長としての第一声。
　何を言うかなんて、迷いもしなかった。
　だって今日は、朝からずっと我慢してきたのだから。

「もう我慢の限界！　最後は皆で宴会だー！」

このページにイラストを設定する