＜宝石人形＞柘榴石ガネット｜リアクション

＜宝石人形＞柘榴石ガネット

　【終幕】

　一週間後、ガネットの制作者が帰ってきた。
　商談は無事成立し、制作者は新しく来た使用人とガネットとの関係を見て、軽く眉間を押さえたが、それを素直に許容した。

　ケンは館で働き始め、時間に厳しい職場において、腕には銀の文字盤に白いベルトの巻かれた腕時計を常に着用していた。
　ガネットは屋敷から出ることはなくなった。愛する者が同じ場所にいる。ならば、出掛ける意味などないのだと言わんばかりに。

「なるほど……こういう事になったか」
　事件の顛末後、ガネットを見に来た夜海霧楓は、実際に彼女の手から出された珈琲と共に、使用人達の間でも明るみに出た、動く人形についての内容に頷いた。
「──また邪魔する。何かあったら連絡してくれ」
　楓の目的は『この事象の全てを、最後まで知る』事にある。始まりから終わりまで。また、とは今は快活に動くこの人形が動かなくなった時。
　何かあったら、とはガネットの活動停止。それ以外には有り得ない。
　ガネットに馴染んだ使用人の中には、その行動にあまり良い思いをしない者もいたが『これは一つの存在が、全霊を懸けて足掻き行い、その悲願を最後まで貫き成した結末である』ことを──それを知った以上、こちらにも、それを知る為に譲れないものはあるのだ、と。
　その思いと共に、楓は連絡先を置いて館を後にした。
　

　
　そして──それから、数日後。
　ガネットは、再び眠りについた寝台から起き上がる事はなかった。

　朝日を浴びて、まるで今日という日を知っていたかのように。
　愛しい人とのペアだと言った、その時計を組むように合わせた両手に持って。

　横たわるその顔はとても幸福に満ち足りたものであったという。
　それを見たケンは泣いた。男らしさも何もなく、嗚咽を零して涙した。

　後に──常闇月の義姉から、月を通して制作者へと一つの依頼が届いた。
　それは、シックな手紙による封書。
　記載された内容は『神魂の影響が消えた、ガネットを買い取りたい』というものだった。
　制作者は、それに丁寧に返答をしたためた。

　ガネットは『家事で、手指は痛み、歩き続けていた為関節もこすり切れ。
　既に買い手は付かない品である』が、それでも良ければと。
　そして、制作者は追記する。
『ただ、
　今尚ここで働いて、毎日動かないガネットを、それでも気に掛ける彼の心が尽きるまで待って欲しい』と。

　同じ場所で、共にいた方が、一人と一体にとって幸せであろう、と。
　幸せで、あって欲しい──と。

　そう綴り。
　制作者は、それに思い馳せるように、その筆をゆっくりと静かに机へと置いた。

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あとがき

担当マスター：冬眠
ファンレターはマスターページから！

この度ご参加いただきました皆様、ここまで読んで頂きました皆様、誠に有難うございます。
この度、ＭＳを努めさせていただきました冬眠と申します。

参加人数様が１０名様となりお一人あたりの行動影響が大変大きくなっておりました中で、今回は冒頭より『これが対処できなければ後味が悪い』という以下の内容を、大きく以下のように設定させていただいておりました。

１.ＳＮＳや、実際に見た人による拡散情報の制御。
　→出来なかった場合、情報が『事実』と認識されフツウが崩壊。
２.ガネットが己の姿を隠さず動き回る事に対しての対処。
　→出来なかった場合、自由に人形が動く事が『事実』と認識されフツウが壊れる。
３.事情を全く知らなかった使用人および館の執事への、今後の行動を含めたフォロー。
　→出来なかった場合、人形が動く事への認識が追い付かず、気味悪さから館の使用人と執事が全員退職。
４.老人ケンが、常識から外れた人形からの愛情の重みを知った時のフォロー。
　→ケンは逃亡し、ガネットは失意のまま活動停止。
５．(４.成功後)ガネットの『これから』に対する対処。
　→姿と場所はＳＮＳで拡散済みの為、そのままの場合はガネットはケンの元へ通うのを止めず、人目は消えず噂の根源が消えない為に、噂は消えずフツウが壊れる。

これの他にも【制作者に商談を放棄し帰還を要請した際に、宝石人形のシリーズがあと一体を残してこれで終了となる】などございましたが、今回の成功判定とは別扱いとなっておりましたものも、今回無事成功とさせていただきまして少しほっと致しました。

特に1.2.5.に関しましては、失敗と判断されました際には、テオが現れ、皆様の掛けていただいたアクションをテオらしく蔑ろにして『フツウが壊れると判断し、普通に思考し動くガネットを、一体のみを次元の狭間へと廃棄する』という結末となっておりました。
成功して良かったと心から胸をなで下ろしております。

この度は少人数であった事もあり、場所によりましては綱渡りに近しい箇所もございましたが、全体と致しましては、それを抜けての成功と相成りました。
バッドエンドだらけの分岐の中で、このエンディングとなりましたのは皆様のお陰でございます。

それでは、この度はご参加いただきまして誠に有難うございました。
ご縁がございましたら、またお目にかかれます事を願いまして。

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