ライブラリ・ラビリンス２｜リアクション

ライブラリ・ラビリンス２

■右の部屋
　入れなかった右の部屋をもう少し詳しく調べてみる、と
綾花と天吏は二人で右の部屋の前に来ていた。
「天吏さんは何を探しに？」
「前回回収できなかった図鑑を。
右の部屋になにか関係あるんじゃないかと思うの。
そういう綾辻さんは？」
「私も、前回回収できなかった振り子時計の中身を取りにです。
とはいえ……」
　一旦言葉を切って、綾花は部屋の入り口を見た。
ぱっと見ただけならば、部屋の様子は前回となんら変わりない。
天吏の目的である図鑑の入った本棚も、
綾花の目的である振り子時計も、依然そこにある。
そう、見ただけならば。
「試しにもう一度入ってみようかしら」
　そういって、まずは天吏が部屋の中へと一歩足を踏み入れた。
途端、隣で見ていた綾花も気が付かないうちに、
天吏はくるりと向きを変え、まるで今まさに部屋を出てきた瞬間のように
廊下へと足を踏み出した姿勢になっていた。
「……やっぱり、ダメみたいね」
「今度は私がやってみます」
　そういって、天吏が見ている前で今度は綾花が挑戦してみるも
結果は変わらず、ただ廊下に出てきてしまっただけだった。
「扉があるわけではないから、力づくで突破というわけにもいかないし
どういうことなのかしらね、これ」
「何者かが何らかの意図を持って
探索場所を制限しているのは間違いなさそうですが……」
　誰が、どうやって、なんのために。
そういった詳細を知る術は一切ないまま、
目の前に横たわるのはただただ
今はこの部屋には入れない、という事実のみだった。
「もしかしたらこの先」
　ぽつりと天吏が自身の推理を口にする。
「探索場所や持ち物だけじゃなく、
私達の行動や、能力まで制限されることもあるかもしれないわね」
　たしかに、ありえない話ではない、と綾花も思う。
ここまでずっと予想外続きだったのだ、次に何が来ても不思議ではない。
「とりあえず怪我をしないように、慎重に行きたいですね」
　それでも、調査を進めるという意志だけは変わらず、
天吏と綾花はその場を後にした。

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