ライブラリ・ラビリンス２｜リアクション

ライブラリ・ラビリンス２

■図書館、再び。
「今、ここなの……」

　大天使天吏は目の前の古びた洋館を前に、
一種の理不尽さと軽い憤りのような気持を覚えていた。
前回の探索ののち、天吏は幾度もこの図書館の手がかりを探した。
それはおそらく他の探索者たちも同じ事だろうと思う。
けれど、探せど探せど図書館の痕跡、資料、気配の欠片すら見つからず
しかし諦めたころになってこうしてまた一同の前に姿を現すのだ。
その、まるでこちらの行動を見透かすかのような佇まいに
どこか掌の上で転がされているような、嘲笑われているような
何とも言えない不可思議な気配を天吏は覚えるのだった。
「以前私達が入った後は、誰も立ち入っていないみたいです。
中に続く足跡も、探索跡も、全部そのまま。
あとは……」

　図書館内の調査の痕跡を調べていた綾辻綾花は、
気が付いたことを一同と共有していく。
「東館の右側の部屋が、なぜか入れなくなっていました」
「ええと右の部屋って、前回みんながすんごい調べた部屋だよねぃ。
入れないって、なに？　例の有刺鉄線とか？」

　呉井陽太が興味津々と言った風に問いかける。
綾花は少し迷ったが、自分が見てきたまま、正直に答えた。
「いえ、見た目自体は前回と変わらないのですが、
入り口から中に入ろうとすると、なぜか廊下に戻されてしまって……」
「押し返されるということ？　それとも、向きが変わっている？」

「向きが変わる感じです。すごく不思議な感覚で……」
　仙藤紫の質問に、重ねて綾花が問いかける。
「むむぅ、なんでしょう。ミステリアスですねぇ」

　椿美咲紀が眉間に皺を寄せて考え込んだ。
「ミステリアスといえば、このメモもそうじゃない？
前回、こんなの書いた人、いなかったよね」

　新田樹がひらひらと振っているのは、
誰が描いたともしれない、ここまでの経緯まとめメモだ。
ざっと見たところ、内容に間違いはないのだが
誰も書いた覚えがない正しい内容のメモ、というものも
なかなかにミステリアスな存在であることは間違いない。
「まあ、今回急に呼ばれたことを含めても、
もう今更ここの不可思議さはわかっていたことだよな。
一応聞いてみるけど、調べる？　帰る？」