＜竜宮＞おいでませ！　藍玉ノ楽園へ！！｜リアクション

＜竜宮＞おいでませ！　藍玉ノ楽園へ！！

＞いざ、沈没船調査！

「わぁ～、きれーい！」
　黒のゴシックロリータなセパレートの水着を纏った少女が、陽光刺す水の世界を見渡し歓声を上げる。
（あれが沈没船ね）
　その傍ら、青くふわりとした水着を纏った朝鳥さゆるは眼前に迫ったそれに瞳を細めた。
　彼女は恋人の姫木じゅんと共にいつのまにかこの沈没船探索に来ていた。当初驚いた彼女であったが、アニメが好きなじゅんは「沈没船！？　それってニャンピースの世界？」とはしゃいでいた。
　一見中高生にみえるじゅんだが、実はさゆるより年上である。まぁ、さゆるの方が年上に見えるのは彼女が持つ魅力もあるのかもしれない。
　それはさておき、沈没船である。かつて立派に伸びていたであろう３本のマストはどれも少しだけ折れており、一番大きなマストにはボロボロの帆だったであろう布が水流に揺れている。人によってはちょっと入るのを躊躇うような雰囲気を宿していた。しかし、寝子島から来た冒険者たちはあまり気にしていないようだが。
「見た目は、そこまで老朽化していないように見えるけれど……、油断はできないわ」
「そうね……。慎重に行きましょう」
　さゆるの言葉に頷いたのは仙藤紫。その隣では妹の仙藤蒼が興味深そうに沈没船を見つめていた。
「これってキャラヴェル船っていうのかな？　何度かゲームにも出てきたよね～」
「あぁ。当時はこの船に乗って旅をしていたと聞いている」
　彼女に開設しつつも沈没船から視線を外さない男はバエル。彼は鰭耳を広げながら頷くと娘のパールが持っていた袋から複数の背嚢を取り出した。中身は水中ライトに水中作業用の手袋、ロープに密封できる袋等々。
「……なかなかの力持ちだな」
　感心したように八神修が言えば、パールは照れてしまう。
　これらの装備は修が出発前に近くのマリンショップで買いそろえた物だ。それに『異界の水』の影響を受けないよう、パールが魔法で水の精の加護を添付している。
「ダイビングの経験はあるけれど、沈没船の中に行くのは初めてなのよね」
　受け取った装備を片手に三折部朝衣は感嘆の息を漏らしながら沈没船を見上げる。
　彼女は婚約者の住沢遥人とサーフィンをしていた際バエルと遭遇し巻き込まれた。そのため二人の出で立ちはスポーティーなウェットスーツである。
「それにしても、落ち着いてないか？　……まぁ、俺もそうなんだが」
「寝子島では比較的よくあることだからかしら？」
　遥人の問いに朝衣は苦笑する。たしかに今までも寝子島では様々な突拍子もない事が起こってきた。何度も巻き込まれたら慣れてくるのだろう。
（本当はこんなことやってる場合じゃないんだけど……、こうなったら受験ストレス解消しちゃうか！　そうしよう！）
　装備の入った背嚢を手に、水上桜は凛々しい表情をしていた。いつのまにか巻き込まれ、水着姿になっており、その事に気づいた時は面食らった。だが、
「きっと、これに付き合わなきゃ神魂現象……？　ともかく、この空間から抜けられないのよね」
　と腹をくくった次第である。
　水中ライトをつけて沈没船を照らせば、劣化具合がよくわかる。そして、中を魚が悠々と泳いでいる様も。ライトが鱗に当たりキラキラ輝く様子を美しいなと見ていた桜だったが、何かの影が横切り咄嗟にライトを消す。
（今の影、まさか……）
　桜には沈没船の話を聞いてから気になっていた事がある。それは船と一緒に沈んでしまった船員だろう『水底の民』が幽霊や骸骨になって彷徨っている可能性だった。

「探索するにしても、手分けした方がいいかな？」
　修と共に来ていた七夜あおいがみんなに問いかける。バエルは少し考えるとテントのようなものを取り出しシートを海底に固定する。
「ここを拠点としよう。何か資料などを見つけたらここに運んでほしい」
「調子を崩したり、怪我したらテントで休んでくださいね。私が運びますから」
　バエルとパールの言葉に頷き、冒険者たちは輪になり調査方針を話し合う。そして、手分けして沈没船探検に挑むことに。