やきゅうしようぜ！！｜リアクション

やきゅうしようぜ！！

【一方、試合に誘われて、やる気のある方々がマトモだとは誰も言っていない問題】

「野球しようぜって誘われた結果、円ちゃんと同じチームだ！」
　小柄過ぎる寝子高生、白真白は桜庭円に抱き付く。
「今日はよろしくね、円ちゃん！」
「おっけー、真白ちゃん！　これから毎打席クルミ割ろうぜ！」
　桜庭の不穏な発言に白は耳を疑い、彼女の顔を見上げる。
「えっ？」
「えっ（笑）？」
「なにわろうとんねん」
　半笑いの桜庭に白の小柄ながらキレのあるツッコミが炸裂した。
　桜庭は苦笑いしつつ、白に軽く謝罪。
「冗談だよ！　相手はののこちゃん、敵において不足なし！」
「ほう、相手はののこちゃんですか、大したものですね」
　白が解説者めいてうぅむ、と唸る。
　桜庭は白の手を取るとにっこり笑って、ある提案を持ちかける。
「今日はボク、ピッチャーの気分！　ボクたちで最強バッテリーを組んでののこ打線を完封してやろう！」
「そういわれると、なんかキャッチャーやりたい気分だし、控えのキャッチャーになるよ」
　恐らく、神魂の影響だろう。
　気分が高揚するし、野球がしたくなるのだ。
「野球漫画だってそれなりには読んでるからね、キャッチャーだってやれるよ」
「でも真白ちゃん、小柄だけど大丈夫ー？　キャッチャーってドカッとしてベーン！と存在感あるガタイのある人がやってるイメージ？」
　桜庭の懸念に、白は自身の柔らかなお胸をぽふんっと叩いてみせた。
「大丈夫、何とかなるよ！　私、今なら剛速球でも受け止められる気がする！　それに、たまにはリードされる側からする側になってみるのも悪くはないかな？」
「？？？　真白ちゃん、何の話？」
「あ、えっと、何でもないよ！」
　実は百合っ気のある白。
　普段は受け身の立場（意味深）であることをポロッと口走ってしまったが、桜庭が気が付いていないので事なきを得た。
「真白ちゃん！　野球はメンタルが命なんだ！　だから、この寝子島書房式野球メンタルサポート交霊術でヒデオの霊を降臨させるのだ」
　メンタルサポートなのに交霊術は果たして必要なのだろうか？
　だが神魂の影響で「こまけぇこたぁいいんだよ！」の状況が、桜庭の無茶振りを可能にしてしまったのだ。
「ねね、キャッチャー用の交霊術ってあるの？」
　ほらね、白も全く疑問に思わない。
　桜庭は本をぱらぱらとめくると、とあるページに目が留まる。
「これだ！　アツヤの霊はカントクの座まで登り詰めた偉大なる捕手の英霊なんだって！」
「すごい！　じゃあ、私はアツヤを召喚するよ！」
　眼鏡捕手アツヤを指差し、白は興奮気味にはしゃぐ。
「よし、それじゃ交霊開始！　石灰で魔方陣を描いて、僕たちが入って、いくよ！」
「いつでもいいよ、円ちゃん！」
　少女２人が向かい合い、怪しげな真言を唱えた後に目を見開き英霊の真名を叫ぶ！

「ヒデェェェオ！！」
「アツゥゥゥヤ！！」

「……あいつら、何をやってるんだ？？」
　優木遥斗は珍妙な女子２人を遠巻きに眺めていた。
　もとより女性が苦手な彼は、この試合が終わるまであの２人に近づかないようにしようと固く誓った。