やきゅうしようぜ！！｜リアクション

やきゅうしようぜ！！

【サンマが美味い？　お前サンマになっても同じこと言えんの？？】

「ホームランかーそっかぁー☆」
　志波武道はののこの誘いに笑顔で快諾。
　だが続くテオの頼みに眩暈を覚えた。
「マジか。マジかぁ……！（また神魂のせいか、ヤンナルネ）」
　思わず天を仰ぐ志波。
「オーケーののこちゃん。今日って何曜日……？　って居ない！？」
　あたりを見渡す志波に対して、テオがジト目で廊下の奥へ目線を向けて呟く。
「ののこなら、もうアッチに走り去っていったぜ？　ちなみに今日は木曜日だ」
「テオぉぉぉー！　それ早く言ってー！！　あと意外と律義に答えてくれるのねサンキュ☆」
　慌てて志波はテオと共にののこを追い掛けていった。

　志波がののこに追い付いた来た時、ちょうど御剣刀に試合のお誘いをしている最中だった。
「ののこちゃんみぃ～っけ！　あ、かったなくぅ～ん！　こ～んちゃ！　ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……」
「志波先輩、なんで全力疾走してきたんですか……？」
「それはだな……」
　後ろから付いてきたテオがにゃごにゃご説明する。
「なんだって！？　また神魂か！　サンマ美味しいけどサンマになって食べられるのは勘弁だ！」
　御剣もまた、天を仰いでしまう。
「あ、そのリアクション、５分前の俺と同じ☆」
「まぁ、このパターンは慣れたとはいえ、やはりこうなりますよね……」
　フツウを守るろっこん男子の憂鬱が共有された瞬間である。
「こうなったら、アホの子、もとい、ののこには何としてもホームランを打ってもらう！」
「そのためにも、ののこちゃんにホームランの打ち方を特訓させなくちゃなー」
　志波の言葉に御剣も首肯する。
「なるほど。アホの子が故に、上手い具合にのせればやれそうだ。よし、やるか！　あ、それで野々を追い掛けていたんですね」
「そーゆーこと！　って、またののこちゃんがいないっ！？」
「おい、お前ら、ののこなら校門にいるぜ」
　窓を除くテオの視線の先、上履きから外履きに履き替えたののこの姿が！
「まずい！　いつの間に外へ！？」
　焦る志波！　ここは２階だ！
　今から玄関へダッシュしても、ののこを見失わずにいられるかどうか！？
　だが、御剣は至って冷静！
「志波先輩、任せてください。この距離、俺なら届く！」
　御剣、教室の窓を開けて躊躇せず飛び降りた！！

「この刃が届くまで、世界よ凍てつけ！」

　御剣は頭の中で『ガチン！』と、撃鉄が落ちるイメージをする。
　彼のろっこん『加速』が発動する！
　更に、進化能力で『本来足場ではない場所で高速移動が可能』となり、二階から飛び降りた御剣の足元は透明のアスファルトめいた頑丈な足場となってその走りを支える！
　ののこの後ろから、見えない空気スロープで高速移動する御剣！
「加速完了ッ！　野々、待ってくれ！　話があるんだ！！」
　呼び止められたののこは、不思議な顔をして首を傾げていた。
「刀君、どうして――？」
（まずい！　緊急とはいえ、ろっこんを使ったのはまずかったか！？）
　御剣の肝がヒヤッとした次の瞬間、ののこは言葉を継いだ。
「――どうして、内履きのままなの？　そんなに焦って、どうしたの？？」
（よっしゃ、アホの子万歳！！）
　御剣が振り返って志波にサムズアップ。
　志波も同様に親指を立て、後輩のファインプレーを労ったのだった。

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