やきゅうしようぜ！！｜リアクション

やきゅうしようぜ！！

【試合直前：紛れ込んでしまった方々がコチラです】

　北里雅樹と椎井莉鳥は元カノ・元カレという間柄だ。
　そんな２人がテオによって寝子電スタジアムに転送されてしまったのは因果を感じざるを得ない。
「あれ？　なんでこんなところへ飛ばされるんだ？　って、椎井？　何やってんだ、ここで？」
「それはこっちの台詞よ。どうやら、またフツウでない事が起きてるみたいね」
　奇しくも二人はもれいび。
　さすが状況判断は素早い。
「で、今回は何が起きてるのかしら？　どうやらここは寝子電スタジアム。そして私たちは野球のユニフォームに着替えているわ」
「本当だ！　気が動転してて全然気が付かなかった！」
　自分の着ている服をペタペタと確認する北里に、椎井は軽く溜息。
「しっかりして、雅樹。とにかく、今から私たちは野球をさせられるようね。負けたらフツウが壊れるとか？」
「まさか！　そんなこと……」
　引きつった笑いを浮かべる北里の前に、様子を見に来たテオが現れた。
　そしてテオも顔が引きつっていた。
「……マジかよ」
　そりゃそうだ。テオ、想定してなかったものね、この状況。
　よっ、ドジ猫☆
「ねぇ、何がどうなってるか、説明してくれるわよね？」
　椎井が屈んでテオを抱き上げる。
　テオ、逃走を阻止されて思わず目を逸らす。
「今回はどうやってフツウを守ればいいのかしら？」
「……説明してやるから、おろしてくれ」
　にゃごにゃごと説明された北里と椎井。
　思わず頭を抱えたのは、北里だ。
「運動音痴の俺に何をどうしろというんだ！？」
　野球の試合をやって、ののこにホームランを打たさないといけないらしいことまでは把握できたが、そのサポートが果たしてできるのだろうか？
　不安に駆られる北里。
「私、野球経験がないのだけれど……。でも、陸上部だから、走りには自信あるわ」
「未経験者でも、ある程度は神魂で自然と体が動くはずだ。そういう風にここを切り離したからな」
　テオもただ無策で世界を切り離したわけではないようだ。
「そう。つまり……」
　これに椎井は思考を巡らせる。
　一方、若干パニックに陥っているのが北里だ。
「相手チームに下剤でも仕込むか？　しかしバレたらヤバい気もするし、第一、神魂空間で下剤をどうやって手に入れるかが問題だし、とにかく面倒くさいな。却下だ却下！」
「ねぇ、雅樹。ひとつ、考えがあるんだけども」
「なんだよ、今、作戦考えてる最中なんだが」
「あれ、みて？」
　椎井は辺りを見渡し、相手チームのベンチを指差す。
「どうやら私たちは、ののこと対戦するチームに所属しているようだわ。これはチャンスよ。雅樹の運動音痴で相手チームに貢献すれば、ののこのホームランのチャンスが巡ってくるきがするわ」
「なんかディスられてるのか期待されてるのかわからないけど……、椎井のいう事は一理あるな」
　他に手はないか、と苦笑いしつつ北里は椎井の考えに乗ることにした。
「じゃあ、頼むぜお前ら。……俺は、他の奴にも説明しに行かなきゃならねぇ」
　めんどくせーぜ、と尻尾を下げたまま、ののこチームへ駆けっていった。
「それじゃ、俺はどんどんエラーを量産していこう。椎井もそうするのだろう？」
「え？　私は初心者なりに野球を楽しもうと思ってるわ。運動部だし」
「あ、そうなんだ……」
　解せぬ、と北里は心の中で粒やしてしまう。
　対して椎井はぼんやりとののこを見遣っていた。
（ののこにホームランを打たせないとサンマと化して猫にくわれてしまう。確かに悲惨な末路ね）
　だが椎井本人は、ののこへの具体的なアドバイスが思い浮かばなかったので早々に諦めて試合を楽しむことにした。
　ポジティブシンキング！！