戦え！　ゴミ屋敷！！｜リアクション

戦え！　ゴミ屋敷！！

　　【大団円】

　こうして、美和先生が丁度部屋に戻ると同時に、部屋からは一気に歓声が上がった。
　ついに、発掘された文明の利器であった掃除機の活用によって、部屋から埃までもが一掃されたのである。

　『やっと人の住める環境まで開拓が成功した！』
　あながち間違っていない表現である。

　皆が、大喜びする中、複数の面子のおなかが同時に鳴った。
　まだまだ食べ盛りの年頃である。
　それを朝から夜近くまで酷使していたらこうなるのは目に見えていた光景でもあった。
　「何か食べ物でも……」

　『こんにちはー、ラーメンの出前ですアルー！』

　拡声器で明らかにこちらに響く声。
　ラーメンの出前？　誰か頼んだのだろうか？

　下を覗き込むと、何と美和先生のクラス1-4の学級委員である畑中華菜子が、熱々の湯気を溢れさせた屋台を引きながら、拡声器で先生の部屋に向かって声を掛けているではないか。

　「華菜子チャン！」
　御薗井Ｅセレッソが外に飛び出して屋台に向かって手を振っている。
　「今日は疲れている皆に、私ラーメンの差し入れに来たアルよ！　食べ放題アル！
　さあ、早く降りてくるアル！！」
　マンションの階層を越えたところまでラーメンの良い香りが広がってくる。
　空腹に食べ放題というシチュエーションに、相手が同じ学生だと判明した空腹に飢えた生徒と先生は、全力で飛び出して群がった！

　「美和先生のは～、お野菜もチャーシューも山ほど入れて～」
　「ええ！　そんなに食べられるかしら」
　「今までずっとコンビニ食だったツケです！　…あ、いえっ！　つけアル！！」

　何人かは既にラーメンを幸せそうに食べ始め。
　そして……ふと、先生の特製ラーメンが出来るまでの間に、御剣刀が、きちんと身なりを整え先生の目の前に立った。
　そして深く一礼をして、大変なことを口にしたのである。

　「先生、今日はありがとうございました。
　俺達の部活はその名前の通り学生の生活を楽しく円滑にする為の手伝いをする事です。
　その為に俺達は他の人にはできない事をできるよう色々な技能を身につける必要があります。

　ただ、俺達は勉強をして頭で覚えても、それを実践する場所がないんです。

　久保田先生はプライベートの空間を使って俺達に部屋の掃除から、食事の支度や片づけ、洗濯物や　洗い物など憶えた事を実践する場を与えてくれました。

　そこまでしてくれる先生は中々いません。これからも今回のように俺達に実践の場を、先生の力を貸してください！　お願いします！」

　……ここで一つ押さえておきたい点として。美和先生は生徒の学習の場としてゴミ屋敷を作成した訳ではない。
　そう、これは聞きようによっては大変な事になる言葉なのだが、口にした刀には悪気も嫌味はかけらも無く、心からの真実としてその言葉を発したのである。
　そして、届いたラーメンを目の前にしつつ……美和先生は感動していた。その純粋すぎる言葉に感動していた。泣きそうになり目頭すら押さえた。

　そして、そのタイミングに乗る様に、添木千唐が後押しする。
　「先生。御剣君の言うとおりです。学園支援部に顧問、もしくは協力して頂けるのは、現状先生しかいません」
　領収書をチラ見させながら、千唐が続ける。
　「う～ん。学生支援部は、学校公認のクラブじゃないのよね？　それだと顧問の先生ってつかないのよ。でも、協力という形なら手伝えなくも無いけれども……」
　「協力なら大丈夫という事ですね！」
　「ええっ、出来る範囲だけれども……」

　「ええいっ！　何をぐだぐだ話をしているでアルか！　ラーメンが伸びてしまうアル！！　早く食べるアル！」

　こうして、皆でラーメンをすすり。
　タダだとばかりに複数人がおかわりを繰り返して、華菜子のラーメンは見事に完売。

　学園支援部は、美和先生に協力の約束を取り付ける事に成功し、
　他の有志は満腹感と、心と清涼感の全てが満たされた、素晴らしい大掃除となったのである。

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