寝子島へ帰ろう！｜リアクション

寝子島へ帰ろう！

　　　８

　死因が毒でなかったからか、雲母は砂にならず、その身体は飛散した。ただ、肉片や血液ではなく、輝く粒となって飛び散り、光の体に降り注いだ。
　それを浴びた光の手足がすうっと伸びていく。
「うわぁ……」
　ロベルトは感嘆の声を漏らした。
　その髪は黄金に輝き、瞳は空のような青、肌は透き通るように白い。通った鼻筋、切れ長の瞳、引き締めた唇は血の色ように赤く、凛々しい。適度についた筋肉といい、まるでギリシャ彫刻のような完璧な造形だ。
「琥珀様っ……！！」
　感激して涙を流す翡翠の気持ちも、分かる気がする。
「元にお戻りに……！！」
　翡翠は駆け寄り、膝を突いた。柘榴も続く。
　が。
「たっくんは？」
　その美しい唇から漏れたのは、前と変わらぬ巧の名だった。
「みなさーん！」
　美咲紀が本拠地で手を振っている。その傍らに巧の姿を認め、光は、
「たっくん！」
と今までより僅かに低い声で、文字通り飛んでいった。
　ヴァルキリーやコロボックルたちは、止めなかった。
「たっくん！」
「え？　え？　も、もしかして、光なの？」
「そうだよ！」
　自分より背の伸びた光に抱き締められ、巧は目を白黒させた。
「よかった！　大丈夫だったんだね！」
「つ、椿さんのおかげで……」
「ありがとう！　美咲紀ちゃん！」
　光は次に美咲紀を力いっぱいハグした。
「随分、大きくなったんだな」
　雅樹も驚きながら言った。うん、と光は頷いた。
「雲母と、あいつが吸収してた藍玉と瑪瑙の分のエネルギーも吸ったからね。でも全部じゃないから、あいつらの能力までは無理だったみたい」
　でも、と美咲紀から離れて光は続けた。
「大人になったから、もう大丈夫。俺がたっくんを守るからね！」

　ヴァルキリーとコロボックルたちは、本拠地の周囲にこれ以上炎が広がらないよう、草花を刈っていった。
　草花が燃え尽されたことに、誰よりも美咲紀が悲しんだ。
「心配ない。いずれ花たちはまた芽吹く」
　リリーたちが前向きなのが、救いだろうか。
「あいつらが邪魔さえしなければな」
　そう、大きな問題が残っていた。

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