寝子島へ帰ろう！｜リアクション

寝子島へ帰ろう！

　　　１

「あれっ？　兄さん！？」
「樹！？」
　ここはヴァルキリーたちの本拠地である。
　新田樹は、パトロールに出たシスルを出迎えた。が、一人だったはずのシスルの傍に別の人間がいるのを見て怪訝に思った彼女は、その中に兄の姿を認め、素っ頓狂な声を上げた。
　一方の新田亮も目を丸くした。
「何でこんなところに……？」
「それはこっちのセリフだ。何でお前がここにいる？」
　駆け寄った二人は、間違いなく兄と妹であることを確認し、共に同じ質問を口にした。
「話せば長くなるが……」
　亮がアイリスというヴァルキリーのリーダーと琥珀（こはく）という男が、と話し始めると、「あ、それ知ってるから。そこ飛ばして」と樹はあっさり遮った。
「亮！」
　そこにリリーが現れた。「無事だったか、お前たち！」
　亮だけではなく、北里雅樹、椎井莉鳥、志波武道、そして東門巧の姿を確認し、リリーはホッと安堵の息をつく。
「琥珀のところにいたらしい」
　シスルが簡単に説明する。
「よくぞ無事で……」
「無事とは言い難いです……」
　巧が泣きそうな顔で、左手を持ち上げた。どす黒い変色は既に肘を越え、肩近くまで広がっていた。反対側は、手の平までも。
「それは雲母（きらら）の仕業か？」
「です……」
　リリーが唇を噛んだ。樹も、話に聞いていた能力を目の当たりにし、顔色を変える。
「こっちはまあ、何とかなるはずなんだ」
と雅樹は言った。「まだ向こうにいる仲間と合流できさえすれば」
　椿美咲紀のろっこん・【舞花の祈り】であれば、治るはずだった――実際そうなのだが、雅樹たちはまだそれを確認していない――。
「うむ、何とか考えよう」
　リリーは大きく頷いた。
　それを聞きながら、樹は亮の腕を肘で突いた。
「何でリリーは兄さんの名前を知ってたの？　前から知り合い？」
「もう知ってるからいいって言ったの、お前だろ」
「そこは聞いてない」
　亮は渋々と、寝子島でリリーが琥珀を探していたこと、それを捕えて匿ったことを話した。
「あー、そういえばそんな通り魔みたいなの聞いたことあったな……」
　ターゲットが男性だったため、樹はあまり関心を持たなかったのだという。
「それにしても、兄さん、女の子連れ込んでたの？」
「は！？」
「やーらしー」
　目を細めてにたりと笑う妹に、亮はいやいやいや！！　と全力で否定した。
「ただ匿ってただけだぞ！？」
「世話してたんでしょ？」
「それだけ！」
「ご飯とか服とか」
「してたけど！」
「ほら。やーらしー」
「どこが！？」
「おーい、作戦会議開くぞー」
　呑気な――亮にとっては必死だが――な兄妹喧嘩に、優木遥斗が声を掛けた。

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