寝子島へ帰ろう！｜リアクション

寝子島へ帰ろう！

　　　３

　翡翠は冷気を纏いながら、降り立った。
　本拠地の正面を守るのは、亮だ。
「貴様！　よくもぬけぬけと顔を出せたものだな！」
　隠れている樹は、「兄さん、何やったのよ……」と呆れた。翡翠は相当、怒っている。
「ちょっと、話をしないか？」
「聞く耳持たぬ！」
　翡翠が腕を振り下ろした。いくつもの氷の塊が亮に向かって飛ばされる。
「気の短い奴だな！」
　亮は息を吸い、頭の中で「発動」と呟いた。そのまま口を真一文字に引き締め、手にした石を投げつける。
　氷塊が砕ける。だが、向かってくる塊は一つや二つではない。
　しかし、亮に当たる寸前、氷塊が姿を消した。
「何！？」
　翡翠は愕然とした。何が起きたか分からない。彼の作った塊は、そう簡単に溶けるものではないはずだ。
「ほいっと」
　壁で隠れた樹の足元に、氷塊がぽろぽろと落ちてくる。
「一丁上がり！　よろしくね」
　コロボックルたちが頷き、きゅいきゅいと声を立てながら、その氷塊を一つずつ亮の元へ運んでいく。
　亮はそれを受け取り、翡翠へと投げつける。自分の武器が己へと還ってきたことに、翡翠はまた驚く。
「何だこれは……何が起きている！？」
　迂闊な攻撃は出来ないことに翡翠は気づいた。
　それならそれで、やれることはある。このために、わざわざ荒野まで行って石を拾ってきたのだ。
　亮は息を止め、次から次に石を投げる。
　翡翠はそれを、冷気の壁で遮った。――と、石の一つが消える。
　ガツンッ！
　と、鈍く、硬い音が響いた。
「……！！」
　翡翠が膝を突いていた。
「な、なぜだ……」
　ついでに涙目である。
「よしっ！」
　手鏡で様子を見ながら、樹は拳を握った。この戦法は有効のようだ。少なくとも今は。
　だがその鏡の奥に、樹は別の人影を見つけた。恐れていた事態が起きたようだった。
　――雲母だった。

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