携帯戦記カプセルギア　外伝　『ミッドナイト・ダンサーズ』｜リアクション

携帯戦記カプセルギア　外伝　『ミッドナイト・ダンサーズ』

　彼女の問いかけに、巧は苦笑する。その視線の先にはドキドキとギアたちの様子を伺う少年の姿があった。
（息子さんを追っていたのか）
　巧の息子と会った事がある月詠はうんうん頷くと、小さく呟いた。
「今宵は、色々と楽しい事になりそうだ」
　そうしている間にも、真白が姿を現す。スピカはクラスメイトの登場に小さく目を見開いた。
「ふむ。あっちにも色々いるみたいだ。私はちょっと他のギアたちも見てくるよ」
　じゃあ、また、と月詠は一礼してその場を去る。そして、面白そうな事は無いかな、と好奇心が滲んだ眼差しを境内に向けた。

「やっほー、こんばんわ。君もギアを追いかけてきたの？」
「えっ？！」
　急に声をかけられ、牛瀬まことは面食らった。相手が普段あまり話さない中学生であれば尚更である。新田樹は目の前の少年が緊張気味に自分を見る姿に、少しだけ苦笑した。
　ややあってまことがこくり、と頷けば樹も「私もだよ」と笑う。傍らには観音菩薩を模した『ゴージャス観音』が浮かんでいる。
　軽く自己紹介しあった２人は、改めてギアたちの動きを見ていた。
「自主練してる子もいればおしゃべりする子もいるね。あ、あっちの子達は対戦かな？」
　樹が目を向けると、向き合っているギアたちの姿が見えた。ゴージャス観音は興味深そうに見ているようだ。
「俺のブルズは、自主練しているみたいだね。おともだちとかできたら、一緒に練習試合とかできそうだな」
　まことは少しだけ緊張を緩め、まじまじで観察する。
「それにしても、一体どうしてこんな事になってるんだろ？」
　そう小さな声で呟いたが、樹はそんな事が些細なことに思えるような気がしていた。

「あっ……」
「こんばんわ」
　環的子と暁桜逢莉もまた、落神神社で出くわした。真夜中に動き出した自分の相棒を追いかけてきた２人だったが、こうなるとは思わなかった。
（ネオムが動いている。……夢じゃない、よね？）
　彼女の相棒、『N.E.O.M.U』（以下、ネオムと表記）の動く姿にとある日の事を思い出す的子。傍らの逢莉は自分のギア『エルミナータ・アウレリア』（以下、エルと表記）とネオムの姿を見つけたのだろう。ぱっ、と表情を輝かせた。
「みつけましたっ！」
「本当だね。それにしても、何をしているのかな。ちょっと見ていようかな」
　的子の言葉に、逢莉はこくり、と頷いた。

　石段を、息を切らせながらすすむリタの傍らに、カソックをつけたキリエがならぶ。
「け、けっこう進んだのです。この先なのです？」
　彼女にだっこされたセラフがこくっ、と頷く。傍らのリタもまた大きくため息をつき、先を行くヴァネッサを追いかける。
「きようにあるくのね。ちょっとたいへんかも」
「大丈夫なのです？　手をかすですよ」
　少し辛そうなリタに、キリエが手を差し伸べる。リタは「ありがとう」とその手をとり、２人で登っていく。と、いくつものギアたちが自分で動いている姿を目撃する。
「ふるいじんじゃにきちゃったのね」
「……ここでいいのです？」
　リタが古い、今にも朽ちそうな社をみて少しどきり、とした顔になる。その傍ら、服を引っ張られたキリエが、セラフに問う。
《ここまででいいのです。ありがとう、キリエ》
《ここからはわたくしが案内しますわ。リタ、貴方もありがとう》
　ふよふよと浮いて一礼するセラフ。その手をヴァネッサはとり、一緒に他のギアたちのいる方へ進んでいく。
「ほぉ……。まるで夢のよーな光景です」
「ぎ、ギアがおしゃべりしたわっ！」
　キリエとリタは、その光景に目を丸くしつつもこのまま観察してみよう、と頷きあった。

　不思議な夜の幕が開く。
　はたして、彼らはどんな夢を見るのだろうか？
　