携帯戦記カプセルギア　外伝　『ミッドナイト・ダンサーズ』｜リアクション

携帯戦記カプセルギア　外伝　『ミッドナイト・ダンサーズ』

　時間をちょっとだけ巻き戻し、瑠樹が自分のギア『ラズちゃん』を追って神社の石段前まできた頃。
（パジャマ姿で思わずここまで追いかけて来ちゃったけど、夜ってやっぱり怖いよぅ～）
　少し怯えた様子で夜道を行くのは、中性的な印象を持つ工藤歩夢。彼は天使のような姿をしたギア、『ラズエル』のマスターだ。
　ラズエルが1人で飛んでいる姿を見、ここまで勇気を振り絞って追いかけてきた歩夢。その元気一杯に飛んでいくラズエルの姿を見失い、慌てていると……？
「俺の相棒、あんなトコにいたっ」
　そう言ったのは源竜世。家から追いかけてきた竜世はその光景に興味を引かれたようだ。ふと、彼が何かに気づき視線を戻すと、歩夢がそこにいた。その後からは良太も着ている。
「おっ！　歩夢に良太じゃん！　お前らもギアを追って来たのか？」
「トリ頭に遭遇したと思えば歩夢に良太まで……。歩夢はそんな格好で出てきたのか？」
　竜世の隣にはよくつるんでいる（らしい）タイラ・トラントゥールの姿があった。彼は内心で神社と夜の雰囲気にごくりと喉鳴らしながらも、歩夢を気遣い上着をかけてあげる。
「ありがとう。……それにしても、みんなのギアも動いたの？　あの噂、本当だったんだねっ！」
　歩夢が少し興奮気味にそういうものの、タイラは内心でため息をつく。
（ギアが動くなんて。誰かにのっとられたのか？　一体どうなっているんだ。誰がこんなにギアを集めてどうしようというんだ）
　と、不思議な出来事には懐疑的である。
「ともかく、行ってみよーぜ！」
　良太の言葉に、歩夢と竜世は笑顔で頷き、タイラは「確かめないといけないな」と真面目な顔で頷いた。

「ふむ。……私が年長者かな？」
　と小さく呟いた旅鴉月詠。彼女は自分のギア『ミミック』に催促されるがままに落神神社へとやってきていた。
　彼女が振り返ると、ちょっとだけ息を切らせたスピカ・フォーツが石段を登ってきていた。
「こんばんわ……。あのっ、実は……」
　と、スピカが自分のギア『トライアルβ』を追ってきた事を伝えると月詠は静かに頷く。
「あっちにいるみたいだね。丁度私のギアとなにやら話しているようだ」
　月詠の示した先では、スピカのトライアルβとミミックが向き合っていた。草むらに隠れて様子を見ていると、なんか意気投合しているのか、楽しそうにしている。
《このパーツ、似合う？　似合う？》
《実に素敵だね。君に似合っているよ》
　そんな会話をする２体に、スピカと月詠はどことなく顔が綻ぶ。よくみればいくつものギアたちが楽しそうに過ごしているようだった。
　辺りを見渡すと、数体のギアがひょっこりと姿を表す。そのうちの１体……雄牛の角と足の部分にキャタピラを持つギアが果敢に木の幹へ突進を繰り返していた。

「まさに雄牛だね。へぇ……、あの角はドリルにもなるのか」
「……パーツも、色々あるね」
　月詠とスピカが頷き合っていると、すぐ近くに、緊張した面持ちでギアたちを見守る少年の姿があった。切れ長ぎみの目に見覚えがあるような印象を持つ。
「お～、まるで童話の世界やな」
「……あっ！」
　急に大人の声がして振り返ると、そこには切れ長の目の男性がいた。それがクラスの担任――牛瀬巧だった為、スピカは目を丸くする。彼の肩には、鎧武者のような二足歩行の牛がいて、そこからぴょん、とギアたちの方へと飛んでいった。
「蹄壱号、おおきにな。……っと、なんや、旅鴉さんとフォーツさんも来とったんか。カプギアって年齢関係なくやっとるんやな」
　巧に笑いかけられ、月詠は飄々と、スピカは（やってるイメージがなかった。……ちょっと新鮮、かも）とちょっと驚きつつ挨拶する。
「もしかして、先生も……、ギアを追って？」
「半分アタリ、かな？」

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