【中間テスト】ウォルター先生の勉強会｜リアクション

【中間テスト】ウォルター先生の勉強会

「勉強かあ……」
　ウォルター先生のおうちに目を輝かせたものの、勉強となるとつまらなそうなののこです。
　英二にとっては意中の女子と一緒に勉強するシチュエーションで、気が緩みそうになるものの……
（学年末のような、野々さんの進級崖っぷち状況は今後避けたい）
　なので、気合を入れてののこの試験勉強を手伝います。
（野々さんの苦手科目は多くて全部の克服は難しそうだから）
「僕の得意科目の現文について試験に出そうな問題を推測して教えるよ」
「ほえ？　どうして問題がわかるの？」　
「えーと、ワークに出た問題とかで基本的なところかな」　
　ページをめくっている英二の手元を、七瀬が覗き込みました。
「現国ですか。どれどれ……えーと、教科書のこのページの……見落としがちですが、こげんところでもテストに出てくるので気をつけたほうがよかですよ」
　七瀬は上級生であることと、自身の記憶力の良さを活かして、英二たちに過去のテストの内容を教えます。
「こんなところもでるんですか。ありがとうございます」

　亮は英語のドリルを取り出しました。
「今回教わるのは英語だ。１年の期末テストでは一番低かったしな。先生、何かお勧めの問題集はありますか」
「うん、定期テストにはワークを繰り返しやるのが効果的だけど、時間があればお勧めのもあるよ」
　先生がお勧め問題集を出してくれました。
　亮に、アリシアが声をかけます。
「私は小さい時から英語を使っていたのでネイティブレベルよ。英語力をみんなのために役立てたいわ」
「それはすごい、ぜひお願いしたいな」
　ウォルター先生が問題集を持っていればそれを問いてみようかと思っていた亮ですが、直接教えてもらえるならわかりやすそうです。
「覚えておくと便利なポイントを解説するわ。まずは文法、前置詞編。onとoffについて」
　アリシアは紙に四角を描きました。
「onはどんなときに使うかわかる？」
「えーと、『上に』とかいうときかな」
　アリシアは四角の上の辺に○を書きました。
「そうね、でもonは、必ずしも『上に』ではない。四角のどの側面にくっついていても、on」
「そうなのか」
　説明しながら、各辺に丸を四つ書きます。
「逆にoffは、onだった側面から離れること」
　そうして、一つ離した丸を書きました。
「なるほど、これはわかりやすいな」
「私も書く～！」
　隣で聞いていたののこが紙に四角や○を書き始めました。
「わかりやすいね。……でも野々さん、ラクガキはそれくらいで……」
　ののこの元気な笑顔が好きな英二は、ついののこに甘くなってしまうのでした。
「折角、先生の家に来ているので英語で分かりづらい箇所を尋ねておこう」
　気を取り直して、ののこの勉強をウォルター先生に見てもらいます。
「それじゃ、まず声に出して呼んでごらん」
　ののこはたどたどしく読み始めました。
「みけ　かめ　ふろむ　かながわ」
　英二は内心頭を抱えました。ウォルター先生は優しく言います。
「……野々、ミケではなくマイク。カメでなくcame。神奈川でなくカナダだよ」
「あっそうかあ」
呆れる様子もなく基礎から教えてくれるウォルター先生ですが。
「……ののこちゃん、よかったら僕も教えるよ」
　流石にこの調子でウォルター先生を独占するのは申し訳ないと、夏朝が声をかけました。
「そうだね、手を上げてる人が何人かいるからまた終わったら戻ってくるよ」
「待ってるね～」
　手を振るののこに、夏朝が言います。　
「勉強とテストが終わったら……可愛い猫さんが待ってるよ！　良い点とったらいつもより猫さんと触れ合える……かも！」
「えっ本当！」
　目を輝かすののこと不安げな英二。
（根拠はない……けど、猫が多い所に案内したいな）
　そう思う夏朝でした。