【中間テスト】ウォルター先生の勉強会｜リアクション

【中間テスト】ウォルター先生の勉強会

「もう中間テストの時期なんですね」
　綾辻綾花は、あおいを誘ってウォルター先生宅の勉強会にやってきました。
「こんにちは、お邪魔します」　
　二人の前には修と美咲紀。
「先生の御厚意に頭が下る思いです。これは気持ちばかりですが、俺達からの手土産のマカロンです」
　俺達からの、というところであおいや皆に視線を向けてから、修は頭を下げました。
「ありがとう。気を遣わせてしまったかなぁ。どうぞ上がって」
　ウォルター先生はにこやかに皆を迎えてくれました。
　
「勉強の合宿してくれるなんて、ウォルター先生って面倒見がいいのね。せっかくだし、お言葉に甘えたいな」
　岡瀬結華は、星ヶ丘住まいなので特に気後れすることなく先生の家へやってきました。
（いつもテスト勉強等は自分の家か図書館だったから、他の人の家……しかもウォルター先生の家に来るなんて新鮮）
　そう思いながら丁寧にご挨拶します。
「先生、今日はお邪魔します。よろしくお願いいたします」
　ペコりと頭を下げ、
「お土産です、よかったらぜひ」
　と、美味しいと評判の東京のお店のクッキーを渡すのでした。
　有名なダンサーだった父が出張のとき買ってきてくれたものです。
「ありがとう、気を遣わなくていいんだよ。これは後でみんなでいただこうか」　

「ウォルター先生のおうちでテスト勉強できるなんて贅沢ですね。先生ってどげんおうちに住んでらっしゃるんでしょうか。いろいろと楽しみですー」
　ウォルター先生のクラスの生徒である倉前七瀬は、わくわくしながら先生のお宅を訪れました。
「おおー、さすが先生のおうちです。すごかー！」
　星ヶ丘らしく大きくて塵一つない家に足を踏み入れた七瀬は好奇心に目を輝かせます。
　家に入るなり勉強のことを忘れて、キョロキョロふらふら。
「こことここの二部屋を勉強部屋に使っていいよ。トイレはここだからね」
　皆に説明するウォルター先生ですが、興味津々の七瀬は止まりません。
「ふむふむ、そうですか。えーとこっちのドアは……」
「そこは洗面所。……あ、ちょっと、そっちは立ち入り禁止だよー」　
　全ての部屋を探索しようとばかりに、豪華なシャンデリアのある階段を上ろうとした七瀬は、先生に止められてやっと我に返りました。
「いやあ、すみません。ついついー。先生のおうちはどこも素敵なもので」
　　
　続々と生徒たちがウォルター邸を訪れます。
「俺が作ったので、お口に合うかわかりませんが」
　緊張しながらクッキーの袋を差し出した亮に、ウォルター先生は顔をほころばせました。
「君が作ったのかい？　すごいなぁ、僕は家事が苦手だから自分で作れる人は尊敬するよ」
「そんな大したものではないですが」
　亮は照れながら頭をかきました。
（ウォルター先生のお家……）
　夏朝は室内の壁や床に目をやります。
（……実は、あちこちに隠し収納なチョーク貯蔵スペースがあったりとか……？）
　趣味がよくぴかぴかなウォルター邸には、そんなスペースの気配はありませんでしたが。
「……相変わらず凄いね、星ヶ丘」
　桜は豪華なお屋敷を見てまたため息をつきます。
（でもそんなこと言ってる場合じゃないわね）
　気を取り直して前日の追い込みにかかることにしました。　

　七瀬は集まった生徒たちを見回して気づきました。
（そういえば、今回後輩ばかりです。上級生としてしっかりせんとですね！）
「そうだ、僕から後輩にアドバイスします」
　皆が七瀬に注目しました。
「ウォルター先生の投げるチョークは、当たったらとても痛いけん、気をつけてくださいね！」
　自信満々にアドバイスする七瀬ですが、後輩たちの目は若干冷めていました。
「倉前、他にアドバイスすることはないの？」
　ウォルター先生がツッコミます。
「……ん？　テストに関するアドバイスしたほうがいいんですっけ？」
（面白い先輩ね）
　結華がくすくすと静かに笑ったのを皮切りに皆からも笑い声が起こり。
　皆の緊張はいい具合にほぐれたようでした。

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