月下の雫｜リアクション

月下の雫

「……と、いうわけで、今は『月下の雫』はお休み中だそうなのです」
　かくかくしかじか、と美咲紀に説明を受け、
冴来、朱蘭、白露の三人はようやく事態を把握した。
「つまり、山の上まで花を採りに行けばいいんだな？
なら、アタシが行ってきてやるよ。親友のための祝い酒だからな」
　そういって勇んで出て行こうとする朱蘭を、
横で聞いていた八神修と恵御納夏朝が慌てて止める。
「待て、向かうのは夜の山だ。いくらなんでも一人は危険じゃないか」
「そ、そうだよ酒浸さん、一人じゃ危ないよ」
「でも、じゃあどうするんだよ。諦めるのか？」
　なおも言い募る朱蘭の言葉を聞いて、
酒造の前まで酒を買いに来ていた客の中、
これまた『月下の雫』を買い求めに来た四名が足を止めた。
「なんだなんだ、あんたたちも山を登ろうってクチか？」

「奇遇ね、私達もなのよ」

　現れたのは、フィーリクス・C・柚瀬とマリエッタ・ラシュリエ。
今期も『月下の雫』を楽しみにしていたというのに、
作られないと知って肩を落としていた二人だ。
「夜の森林浴というのも、気晴らしになりそうよね」

「せっかくの休みだし、有効利用したいしね」
　深倉理紗子と水谷真優理も、
どうやら月虹花採りに参加する気たっぷりのようだ。
こちらは酒はもちろんのことではあるが、
更に夜の山登りで体を動かすことによって
仕事に忙殺されていた鬱憤を晴らそうという思惑もあるようだった。
「ええと、これで十人、かな？」
　白露が人数を数えて呟いた。冴来も頷く。
「ええ。これで足りるかしら……？」
「普段は店主ひとりで行って持って帰ってくる量だ、
十人いれば十分だろう」
　修の言葉にそれもそうかと納得した一同は
一旦帰宅し装備を整え、改めて今夜集合しようと決めて、
酒造を後にした。

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