つつもすすはらいて｜リアクション

つつもすすはらいて

「倒れた人たちは治療して……急いで連れて帰らなきゃ」
音海なぎさも小さなけがではなかったが、気丈に立ち上がって応急処置に回っている。さすがに奔走という分けには行かず、新井すばるに肩を支えられていた。揺り起こされた久坂日和は、この期に及んでまだ面倒くさそうにぼやいていた。
「え？　病院？　やだよ。僕、注射嫌い」
だが無視したなぎさたちに担がれて、一足先に境内から姿を消す。

「小山内、大丈夫か？」
御剣刀の温かい視線を注がれ、小山内海はこくりとうなずく。
「小山内さんが無事で本当によかった」と橘舞。
「海ちゃん強かったよ！　手ごわくてびっくりしちゃった」と桜庭円が言うと、海は小さく縮こまった。手には『ごめん』のスケッチブック。
刀は笑ってチームの面々に感謝を告げた。
「みんながいなければ、やれなかったと思う。……本当にありがとう」

「落ち着いたら、みんなで神社を掃除しませんか？　お参りもして……」
綾辻綾花はそう提案する。もちろん、と新井すばるは笑顔で答えた。同意の意味で御薗井Ｅセレッソも高々とデッキブラシを掲げる。
「そうだな！　こんなに荒れてたら神様もそっぽ向くだろコレ……みんなでお社、きれいにしようZE★」
精神支配から解放され、持ち前のタフさで元気を取り戻した志波武道は場の空気を和ませるように、つとめて明るくそう言った。『ありがとう』の代わりに楪櫻に微笑む。櫻はその笑みをどう受け止めていいのか、目を白黒させていた。
「せめて安らかな道を歩めるよう、僕はきちんと供養をしてあげたいと思う」
まだ苦しいのか、額に汗をにじませながら逆巻天野ははっきりと言った。その傍らでは、意識を取り戻し、きれいに応急手当を施された七夜あおいと、霧生深雪が必死で「こんな役に立たない神社分解してやる」と憤る八神修をなだめていた。

大きな安堵と少しの寂しさを残して、この怪異騒動は終わりを告げた。

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あとがき

担当マスター：清水るね
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「つつもすすはらいて」完結です。つつもは、倒さねばならないシンプルな敵としてデザインしました。結果思い切り殴り、殴られ、リアクションのような結末となりました。つつもに操られることを希望されたキャラクターは予想以上におりましたが、全員を採用させていただいています。

今後登場する可能性は皆無ですが、敵役となった「つつも」についてご紹介させていただきます。

「つつも」は「足りない」と言う意味の「つつ」と百を意味する「もも」の二つの古語が合わさり生まれた言葉です。本来の意味から「九十九」の漢字があてられたこの語は次第に「つくも」に変化していきました。

さてここまで説明いたしますとはっきりわかることと思いますが、「つつも」はつくもであり、つくもがみです。九十九髪であり、付喪神なのです。本来九十九髪は百に一足りぬ髪＝白髪なのですけれども、後述の理由によって彼女は黒髪にしてしまいました。力を失い、消える寸前に字義通りの白髪に戻るという演出を行っています。

つくもがみとは、（諸説ありますが）長く使われたものに自我や思念が宿ったものとされる妖怪です。「つつも」は櫛から生まれました。乙女の毎日に寄り添って年月を重ねてきた彼女は、古びる前に飽きて捨てられたこと、自分の姉妹とも言える他の櫛たちも同じような扱いを受けたことから、荒ぶる魂として人間に深い恨みを抱くに至りました。櫛の妖怪というならば、つややかでまっすぐな黒髪がよかろうということで、名前通りの白髪の妖怪にすることはやめました。黒髪の美少女の方が盛り上がりますよね？

負傷結果は、個別コメントでお知らせいたします。特に記述のない方は無傷か、かすり傷です。負傷結果を他のシナリオ担当マスターに参照してもらいたいとお考えの方は、キャラクターの自由設定欄に記述するようお願いします。

それでは、また次のシナリオでお会いいたしましょう。

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