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- 種族
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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
つつもすすはらいて
戦闘能力がないながらも、弘明寺 能美子もまた果敢にこの妖異対決へと挑んでいた。
（人がいなくなった上にあの黒いもの！ ……怖いわ。でも、来なくちゃいけない。そんな気がした）
尋常ならぬ巨大な毛髪、その真ん中に立つ妖怪。異様な光景にも決して能美子はひるまなかった。
（あの妖怪はきっと本体じゃない。古い人形とか……そんな感じがする）
確かにつつもの外見は、日本人形によく似ていた。もし、物質が相手なら――それが壊れていればの話だが――過去を読み取り、この暴れ狂う妖怪の真実を知ることができるかもしれない。古いものに触れて、思わぬショックを受ける恐怖はまだあった。しかし、それと同時に、もれいびとして自分が得た力を有効に使わなければいけないのではないか、という使命感に似た気持ちも生まれて来ていた。後者の気持ちに後押しされ、能美子は前に踏み出す。
（私にチャンスを。なぜ人を憎むの？ あなたは人に捨てられたの？）
「おい、危ないぞ！」
風雲児 轟は進む能美子に叫んだ。彼女はスポーツや、まして戦闘になど慣れているようには見えない。防御的なろっこんを持っていたとしても無謀すぎる。だがこの呼びかけが仇となった。声をかけられた能美子は振り向き、新たな接近者がいることをつつもは知る。髪をばねのように使い、一気に距離を詰め、能美子が気づいたときにはつつもは彼女のすぐ近くへ来ていた。長い黒髪と黒い瞳を持つ少女同士が見つめあう。
能美子はつつもに手を伸ばす。その手がかすかに震えているような気がするのは錯覚だろうか。つつもの髪に手を触れて、能美子は間違いなく、この少女妖怪が『壊れたモノ』を出自とするものだと知る。しかし、それを戦う者たちに伝えるすべはなかった。
「あなた、人形ではない、けど、やっぱり……」
「お前……よくも、よくも……」
続く言葉は、能美子の頭に、直接叩き込まれた。
（よくも私の中をのぞいたな！）
止める間もなく、能美子は滝のように落ちる黒髪に飲み込まれる。黒髪に包まれた人型の像が生まれ、波が引くように髪がその場を離れていった後には、他の者と同じように、櫛を髪に挿した能美子が立っていた。
「これで二度と邪魔はできまい。せいぜい私の盾になってもらおう」
つつもの赤い唇がゆがんだ笑みを作った。
これほど多くの人々が戦い、傷つくところなど見たことがない。
これほど美しく、そして異様な存在を見たことがない。
つつもともれいびたちの戦いの中に、添木 牡丹はわが身も省みず入っていった。
「ぐうっ……」
「しっかり！ 今、治療しますぅ！」
硬化していない腕を貫かれ、橘 勇がうめく。勇敢にも、牡丹は危険な最前線にいる勇のもとへ駆けつけると、鮮血の流れる腕に手早く包帯を巻きつける。黒髪の槍と拳と蹴りと突きが飛び交う中、目を閉じた。
（お願い！）
願いに似た集中、集中に似た願いの成就。ろっこん『傷移し』で、彼の腕に開いた小さな穴は牡丹の細い腕の同じ位置に移った。
「い……たぁ！」
「どうなってるんだ？ 大丈夫か!?」
「い……いいのですぅ。これが私のろっこんですから……私の代わりに前で戦ってください！」
傷の痛みに耐えて、勇を激励する。勇は礼の代わりに行動で牡丹の献身に応えようと、再びつつもとの対決に挑む。
「貴様！ 癒しの術を使う……捨て置けぬ！」
途端、らんらんと光る魔の瞳は牡丹に釘付けになる。一筋の黒髪の束が疾風のごとき速さで牡丹に向かった。
「事情は飲み込めませんが……」
牡丹は小さくつぶやいた。
「……とにかく、憎しみで人に危害を加えるような悪い子は、お仕置きですぅ！」
「なにっ！ 小癪な！」
単なるか弱い癒し手かと侮った牡丹が、八卦掌をはじめとする武術の使い手であったことはつつもの予想外であった。つつもの一撃はきれいに受け流され、あらぬ方向に飛んで行って地面の小石を散らした。一撃、また一撃。しかしどれもが当たらない。牡丹はゆっくりと回るように歩を進めているだけなのに、髪束の流れの裏に回り、ヒットするコースからは巧みに身を引き続けているのだった。さらには牡丹は回避しながらじりじりと位置を移動し、負傷の目立つ犬神 花梨の近くにいつの間にかたどり着いていた。
「助けます！ 私に傷を預けてくださいぃ！」
「ああ!? 腕はほっとけ！ あとは邪魔になんねぇならやってみろ！」
切り傷の刻まれた足に包帯を巻き、祈るように。たちまち新たな傷が牡丹の足に刻まれる。血に塗れ、傷づくことをいとわない癒し手。それはますますつつもの怒りを呼んだ。質量を持ったものが高速で近づいてくる、風切る音を背中に感じて、牡丹は『傷移し』を行ったばかりの花梨を背でかばう。
（人がいなくなった上にあの黒いもの！ ……怖いわ。でも、来なくちゃいけない。そんな気がした）
尋常ならぬ巨大な毛髪、その真ん中に立つ妖怪。異様な光景にも決して能美子はひるまなかった。
（あの妖怪はきっと本体じゃない。古い人形とか……そんな感じがする）
確かにつつもの外見は、日本人形によく似ていた。もし、物質が相手なら――それが壊れていればの話だが――過去を読み取り、この暴れ狂う妖怪の真実を知ることができるかもしれない。古いものに触れて、思わぬショックを受ける恐怖はまだあった。しかし、それと同時に、もれいびとして自分が得た力を有効に使わなければいけないのではないか、という使命感に似た気持ちも生まれて来ていた。後者の気持ちに後押しされ、能美子は前に踏み出す。
（私にチャンスを。なぜ人を憎むの？ あなたは人に捨てられたの？）
「おい、危ないぞ！」
風雲児 轟は進む能美子に叫んだ。彼女はスポーツや、まして戦闘になど慣れているようには見えない。防御的なろっこんを持っていたとしても無謀すぎる。だがこの呼びかけが仇となった。声をかけられた能美子は振り向き、新たな接近者がいることをつつもは知る。髪をばねのように使い、一気に距離を詰め、能美子が気づいたときにはつつもは彼女のすぐ近くへ来ていた。長い黒髪と黒い瞳を持つ少女同士が見つめあう。
能美子はつつもに手を伸ばす。その手がかすかに震えているような気がするのは錯覚だろうか。つつもの髪に手を触れて、能美子は間違いなく、この少女妖怪が『壊れたモノ』を出自とするものだと知る。しかし、それを戦う者たちに伝えるすべはなかった。
「あなた、人形ではない、けど、やっぱり……」
「お前……よくも、よくも……」
続く言葉は、能美子の頭に、直接叩き込まれた。
（よくも私の中をのぞいたな！）
止める間もなく、能美子は滝のように落ちる黒髪に飲み込まれる。黒髪に包まれた人型の像が生まれ、波が引くように髪がその場を離れていった後には、他の者と同じように、櫛を髪に挿した能美子が立っていた。
「これで二度と邪魔はできまい。せいぜい私の盾になってもらおう」
つつもの赤い唇がゆがんだ笑みを作った。
これほど多くの人々が戦い、傷つくところなど見たことがない。
これほど美しく、そして異様な存在を見たことがない。
つつもともれいびたちの戦いの中に、添木 牡丹はわが身も省みず入っていった。
「ぐうっ……」
「しっかり！ 今、治療しますぅ！」
硬化していない腕を貫かれ、橘 勇がうめく。勇敢にも、牡丹は危険な最前線にいる勇のもとへ駆けつけると、鮮血の流れる腕に手早く包帯を巻きつける。黒髪の槍と拳と蹴りと突きが飛び交う中、目を閉じた。
（お願い！）
願いに似た集中、集中に似た願いの成就。ろっこん『傷移し』で、彼の腕に開いた小さな穴は牡丹の細い腕の同じ位置に移った。
「い……たぁ！」
「どうなってるんだ？ 大丈夫か!?」
「い……いいのですぅ。これが私のろっこんですから……私の代わりに前で戦ってください！」
傷の痛みに耐えて、勇を激励する。勇は礼の代わりに行動で牡丹の献身に応えようと、再びつつもとの対決に挑む。
「貴様！ 癒しの術を使う……捨て置けぬ！」
途端、らんらんと光る魔の瞳は牡丹に釘付けになる。一筋の黒髪の束が疾風のごとき速さで牡丹に向かった。
「事情は飲み込めませんが……」
牡丹は小さくつぶやいた。
「……とにかく、憎しみで人に危害を加えるような悪い子は、お仕置きですぅ！」
「なにっ！ 小癪な！」
単なるか弱い癒し手かと侮った牡丹が、八卦掌をはじめとする武術の使い手であったことはつつもの予想外であった。つつもの一撃はきれいに受け流され、あらぬ方向に飛んで行って地面の小石を散らした。一撃、また一撃。しかしどれもが当たらない。牡丹はゆっくりと回るように歩を進めているだけなのに、髪束の流れの裏に回り、ヒットするコースからは巧みに身を引き続けているのだった。さらには牡丹は回避しながらじりじりと位置を移動し、負傷の目立つ犬神 花梨の近くにいつの間にかたどり着いていた。
「助けます！ 私に傷を預けてくださいぃ！」
「ああ!? 腕はほっとけ！ あとは邪魔になんねぇならやってみろ！」
切り傷の刻まれた足に包帯を巻き、祈るように。たちまち新たな傷が牡丹の足に刻まれる。血に塗れ、傷づくことをいとわない癒し手。それはますますつつもの怒りを呼んだ。質量を持ったものが高速で近づいてくる、風切る音を背中に感じて、牡丹は『傷移し』を行ったばかりの花梨を背でかばう。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2013年08月19日
- 参加申し込みの期限
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- 2013年08月26日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2013年08月26日 11時00分
