メカリエチャンがやってくる！｜リアクション

メカリエチャンがやってくる！

「ロボ娘による寝子島のフツウの危機……だと！？」

　ピアノの音がどこからかガーン！　と響いて来そうなほど、メカリエチャンの脅威を聞いた冴木竜司は衝撃を受けた。竜司はガッ！　と両の腰に両の手を当て、バーン！　と叫ぶ。

「よーし！　こうしちゃいられない！　俺も善良な島民として盛大にお迎えしなければな！」

　風が吹き、彼の前髪が靡く、竜司は更にドーン！　と手を、人差し指を上に、高らかに言った。

「そう、紳士的に！！」

　彼の言う紳士。紳士は紳士でも、カッコつきで変態の紳士だ。竜司はポーズを変え、自信満々にこう言う。

「逆に考えるんだ、奇行でおかしくなって捕獲出来ないなら、既に奇行に走っていれば影響は弱まるはずだと！」

　ビシッ！　ガシャーン！　紳士のフォームチェンジをすべく、竜司は指先までぴしっと真っ直ぐに！　ポーズを決める！

「変身！！」

　そして竜司はバッ……と服を脱ぎ、その姿を現した。下着にあたる部分には、自作のレインボー褌。両腕と両足には、レインボーストッキングを着用。それは今回からの新要素だ！　さらに頭はレインボーパンツを被り、蝶マスク！　それらすべてを身に着けた変態紳士。それが今の竜司。まさにその男、とってもレインボー。

「フッ、俺こそがレインボーの中のレインボー……」

　竜司は笑い、はっちゃけながら飛び立つ。

「RYU☆ZIN改めレインボー仮面、ただいま参上！」

　竜司が奇行に走っている中、新田亮は、黄井研究員に自らの作戦を披露していた。

「……ムム、難しいな」
「出来ないか？」

　その作戦とは、まず、呼び笛の音色を録音し、黄井研究員に亮が指定した廃工場へ行ってもらい、そこへ亮が中型バイクへ乗って近付く。そして亮が録音した呼び笛を再生し、メカリエチャンを誘導する。亮とメカリエチャンが廃工場へ入った後、黄井研究員も中に入り、メカリエチャンに向けて捕獲網射出機を放つ……といったものだ。メカリエチャンが抵抗する場合は、亮が硬球を全力で投げることになる。

「だいいち、メカリエチャンが壊れてしまったらどうする。私はクビになるんだぞ！？」

　とても小物臭い叫びを上げながら、黄井研究員は首を振った。亮はそれに動じず、ただ冷静に返した。アフターケアもしっかりと考えているのが、亮のやさしさだ。

「母の勤め先である漁港を紹介する。アットホームな会社だから、研究所のように理不尽な理由でクビにする事はない」
「アットホームだと！？　そんな言葉、一番信用できん！」

　黄井研究員は顔面を蒼白にして、運転席のドアを閉じ、シートベルトを締めた。

「アットホームなど……そんなの……ブラック企業か！？　絶対に嫌だ！！」
「ブラッ……そんなことは一言も言ってないんだが！？」
「嫌だね！！」

　亮の非常に魅力的な申し出は、黄井研究員の独特な地雷を踏んでしまったようである。理不尽にも運転席のドアは激しい音を立てて閉められ、そのまま車は亮を置いて走り去る。

「ウワアアアアアアー！！　休みは休んでいたいんだー！！！」
「そんな職場ではないんだが……」

　亮はしょんぼりと肩を落としながら、借りたばかり呼び笛を吹いた。