メカリエチャンがやってくる！｜リアクション

メカリエチャンがやってくる！

「おのれ……フツウめ！！」

　水上桜は苦々しくも顔を顰めてこう言った。彼女がもれいびになったのは、去年の秋のことだった。それ以来、否応なしに『フツウ』な出来事に巻き込まれ、人生を左右する高校受験の間際にまで容赦なく『フツウ』は襲い掛かり――とにかく、迷惑を被っては、『フツウ』に苦しんだのだった。
　道を歩いていた桜は、ふと『フツウ』な出来事に巻き込まれそうな予感に頭を抱える。そして彼女が切り分けられた後の世界に迷い込んだのは、一瞬。

「ンパー！　ンパー！」

　顔を上げた桜のすぐそば、メカリエチャンが接近してきた。桜は突如現れたそれにたじろぎながらも、メカリエチャンの接近に、なぜか、服を脱ぎだしたくなってくる。彼女を急に襲った衝動は全身を侵食して、着ている服への違和感で頭がいっぱいになった。
　――ていうか、今着ている服、はっきり言って邪魔だ邪魔だ邪魔だ！
　そう思ったからにはと、桜は勢いよく服を脱いで、ブラとパンティのみになった。しかしそれすらも邪魔に感じる。桜はそれも脱ごうと手を動かしたが、そこでバイクのエンジン音が激しく響いた。

「何をしてる！？」

　止まったバイクから、八神修が降りてきて、桜の手を掴む。それによって、彼女が裸体を晒すのは避けられた。布を羽織り、バイクの後部座席に乗せられた桜は、メカリエチャンから遠く離れて正気に戻る。すると、やけにすーすーする肌に思わず自分の身体を見る。下着姿になってると見るや、意味不明の金切り声を出した。

「止めて！　降ろして！」
「どうしたんだ！」

　修もその場にバイクを止め、しゃがみ込んだ彼女の肩を掴んで揺する。揺さぶられる桜の心の内には、怒りの炎が燃え盛っていた。自分を困らせる『フツウ』への怒りに。

「少年、捕獲は順調か！」

　ちょうどその時、黄井研究員の車が修のバイクの隣に停まる。桜はその開いたドアの隙間から捕獲網射出機を奪い取ると、

「これだからフツウは嫌なんじゃー！！」

　と大きく叫び、メカリエチャンの逃げていった方へと走り出した。

「なっ！　少女よ！　どうしてしまったんだ！」
「ををををーーーー！！！」

　最早雄叫びと言ってもいいほどのそれは、桜の姿が遠く、遠くへ消えた後にも続いていた。黄井研究員と修は顔を見合わせ、またバイクと車を動かす。

「ンパー……ンパー……」

　メカリエチャンと桜の追いかけっこは始まったばかりだ。彼女のような被害者を増やしながら、メカリエチャンは爆速で走り続けている。メカリエチャンよ、フツウを壊し何処へ行く。

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