メカリエチャンがやってくる！｜リアクション

メカリエチャンがやってくる！

　『浅葱眼鏡店』は、参道商店街に軒を連ねている。その隅で店主である浅葱あやめは訪れるであろう客を待っていた。麗らかな春の日差しを浴びながら、あやめはふと、違和感を覚える。其れは何かの境界を踏み越えたような、別の世界に迷い込んだような感覚。
　――……これは、いつかもあったような。
　あやめは前に起こった出来事を思い出しながら、神魂事件と狙いをつける。
　――神魂絡みで何かあったんだろうか。

「待てっつったろ！！」
「ンパー！　ンパー！」

　あやめが考えてそっと外を伺うと、外からレオンの声と機械音が聞こえてきた。それはとても騒がしく、何が起こっているのだろうと、あやめは恐る恐る顔を出してみる。あやめの前髪がふわりと靡いて動く。目の前を猛スピードで走っていったメカリエチャンに、あやめは呆然とした。

「あれ、え……うわあぁぁぁ！？」

　レオンの身体が、勝手に動く。レオンの身体は吸い寄せられるかのようにあやめに突っ込んでいった。

「う、わっ……！」
「う、うわぁぁ！？」

　レオンの身体はそのままあやめに抱き着き、殺せなかった勢いからぐらりと重心が崩れて二人とも地面に倒れこむ。その結果押し倒す形になった。レオンの顔があまりにも近くて、あやめは思わず目を逸らす。そしてはっと冷静になって、顔を蒼くした。
　――…失礼だっただろうか、不快に思われなかっただろうか。
　そう思いながら、あやめは視線を戻す。

「すいませんすいません！！　わざとじゃねえんです！！」
「す、すみません……お怪我はありませんか……？」

　レオンはあやめに謝りながら、
　――くっそ、あの研究員が言ってた弊害ってこのことか！
　と考えていた。レオンはあやめに事情を説明すると、立ち上がろうとするが、そこで自らの手があやめの手をしっかりと握って離れないことに気付く。あやめはその手につい目線をやっては、逸らした。
　――……な、なんで、よりによって……。
　レオンもこれには焦るものの、
　――仕方ねえ、このまま追いかけるしか……！
　と割り切るや、あやめの手を握り直した。

「本当にすみません……せめて……女の人なら、よかったのかもしれませんが……」
「い、いやいや！　大丈夫です！　っていうか巻き込んですいません！　しばらく手伝ってください！」

　レオンにこう言われて、あやめは少しほっとしたように息を吐いた。

「ンパー！　ンパー！」

　メカリエチャンが遠く走っていく。商店街を抜け、今度は何処へ行く。

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