【山小屋のカーネルさん(4)】

「……ジャッジメント、大丈夫か！」
　小屋の外に飛びだした勇樹くんは、まずジャッジメントの無事を確認。
　まだ動けることを確認すると、後を追ってきた翔くん雪人くんと頷きあい、ギアバトルを再開します。
『――いいか、『SHO』。やつのステルスは厄介だが、完全無欠ではない。エフェクトをよく見て、私に指示を出せ』
「……わかった！」
　翔くんはリットの声に頷きつつ、右腕のミニ大砲を発射。刹那、ステルス機能でリットの姿が消え、カーネルさんと同じステルス状態になります。
「……ジャッジメント！　敵を逃がすな！」
　勇樹くんがスマホをスワイプ。それに従って、ジャッジメントが頭部のセンサーを頼りにガトリングを連射します。
　しかし、小屋から山の中という広大な戦場へ身を移したカーネルさんは水を得た魚のように素早く動いてそれを回避。
「……早いね。けど、上手く連携すれば当てられるハズ」
　雪人くんがスマホをフリックしながら、ちらと翔くんを見れば、彼は一瞬でその意図を理解します。
（……合わせろ、ということか。わかった……！）
　翔くんが小さく頷くと、雪人くんが口元だけで笑い、ボナパルト２で攻撃を開始。
　目視したエフェクトを目で見るだけでなく、そこから次の行動を予測した偏差射撃はカーネルさんの足下に命中。



「……そこだッ！」


　わずかに体勢を傾かせた（と思われる）カーネルさんに、翔くんがリットの渾身の頭突きを叩き込みます。
　そして、よろめいたところに、ラ・スパイラル――ボディパーツから放たれる真紅の竜巻によって、苛烈にして華麗な追撃を加えます！
「よし、入った！」
「……やるじゃん」
　ぐっと拳を握る翔くんに、雪人くんが小さく微笑みます。
「ぬわー！？　おいどんのカーネルさんに何をするだすー！？」
　それを見て、窓に引っかかったGREENが悲鳴をあげました。
「だ、大丈夫だよぉ！　オレ達のギアが攻撃しても、カーネルさんが傷つくことはないからねぇ！」
　瑠樹くんは荒ぶる『GREEN』をそうなだめながら、一応、ろっこん発動のためにラピちゃんのスタンバイも欠かしません。
　カーネルさんは負けじとショットガンを乱射。
　全方位に向けて発射される散弾の嵐に、ギアマスター達はおいそれと接近できません。
「……み、みんな頑張ってえ！　弾はオレが引きつけるよぉ！」
　瑠樹くんは、ラズちゃんのシールドを展開して、散弾を防御しつつ、囮役に踊り出ます。
「くっ……。このままじゃ皆に危害が及ぶ……。こうなったら――」
　勇樹くんが、最後の手段としてろっこんによる直接攻撃に転じるために、血液の入った小瓶を取り出します。
　戦況に、変化が起きたのはそのときでした。





「え……？」
　勇樹くんが大きく目を見開きます。
　突然、１０ｃｍほどの青い鳥が目の前を横切り、同時に小さな多面体の粒子を空中にバラ撒いていったからです。
「わあ、きれいだねぇ～」
　と、瑠樹くんは思わず呟きます。
　しかし、その粒子はただの粒子ではありませんでした。
　次の瞬間、その粒子に当たったカーネルさんのショットガンがそのまま跳ね返って、カーネルさんに直撃しました。
「なんだ、あれは……」
「……あれもカプギアだね」
　目を見張る翔くんの隣で、雪人くんが呟いたとき、樹上からよく通る声がギアマスター達に響き渡ります。
「リフレクター粒子を散布した。乱反射するエフェクトを見て、敵の位置を見極めるんだ」
　一同が、ハッと声のした方を見やると、さきほどの青い鳥を肩に乗せ、フード付きの外套を目深に被った謎の人物――早鳴くんが樹上からこちらを見下ろしていました。
「……なんだ、あいつ、不審者か！」
　正義を愛する勇樹くんが思わず言うと、フードの下で早鳴さんは苦笑い。
（……不審者、か。まあ自覚はあるけれどね）
　プチ傷心しつつ、早鳴くんはそれ以上は動きません。
　彼の言ったように、先程の青い鳥――オオルリを模したカプセルギアのルリィが両腕パーツの翼から散布した粒子は、カプセルギアの攻撃を反射する、多面体の形状をした特殊なリフレクターでした。
（さて、僕の出番はここまでかな……）
　そこで役目は終了とばかりに、ひっそりと姿を消します。あれこれと詮索をされるのも面倒、というのも理由の一つではありましたけれど。
「よし、チャンスだ！　敵はあそこだ、ジャッジメント、全弾ブチ込んでやれぇ！！」
　ジャッジメントが左腕のファイアガトリングを容赦なく連射します。
　自分の武器の反射によって動きを阻まれたカーネルさんはそれを避けられません。
　弾丸の嵐を受けて、カーネルさんが膝をつきます。
「今だ、ジャスティスブレード！！」
　刹那、ジャッジメントはカーネルさんの懐に飛び込み、裂帛の気合とともに強烈な斬撃を叩き込みました！
「……GREEN。真にカプギアで勝ちたいなら……努力して強くなるんだ」
　勝利を確信した勇樹くんが静かに呟いたとき、カーネルさんは静かにその場に崩れ落ち、無事にその暴走を停止させることができたのでした。

【終了会話】

GREEN「……ありがとう、ありがとうだす！　おかげで無事にまたたびメイトとミリ飯が守られただすー！」
翔「……いや、またたびメイトとミリ飯だけ、なのか？」
GREEN「もちろんカーネルさんのことも感謝してるだすよー！　もうツールは使わないだす！」
瑠樹「うんうん。よかったねぇ～。次は暴走無しのカーネルさんとバトルしてみたいなぁ」
勇樹「……なあ、俺、さっき凄く良い事言ったよな？」
GREEN「あ、もちろん聞いてただすよー。おいどん、こう見えても上位ランカーだすから、その名に恥じぬよう、今後は正々堂々戦うことにするだすよー！」
勇樹「……そうか。ならば、今日からお前も正義のギアマスターだ！」

【MISSION COMPLETE!】