もふもふ！大型幻獣と遊ぼう！｜リアクション

もふもふ！大型幻獣と遊ぼう！

　テオの言葉を耳に、新田亮はやれやれと息を吐いた。
「テオが厄介事を押し付けないとは珍しいな」
　さて、と、亮は空を見上げる。
　人気のなくなった世界に望める、幾つもの翼獣の影。
（以前共に戦った翼獣も、来ているんだろうか）
　なんてことを考えていたら、不意に、背をどん！　と突かれた。
「痛！　何だ……って、お前、もしかして……」
　オオウ！　と応じる声はどこまでも勇壮に。
　振り返った先には、強気な眼差しをした、１頭の翼獣の姿があった。
　かつて翼獣達の世界で、亮と行動を共にした翼獣だ。
「お前、よく、俺を見つけ出せたな」
　ふふん、とばかりに翼獣が胸を張る。
　その様子に、亮はくつと喉を鳴らした。
「何かの縁、というやつだな。折角だ。今日は一日中遊ぶか」
　オウ！　と翼獣が嬉しげに吠える。
　そんな翼獣を伴って、亮は先ずは、寝子高へと向かった。
　誰もいないグラウンドにどんと立ち、亮は腕を組んで言う。
「俺は、普段ここに通って勉強しているんだ」
　ベンキョウ？　とでも言いたげに、首を傾げる翼獣。
　何と説明すればいいものかと、亮は首を捻った。
「ああ……まぁざっくり言うと、人間社会で生きるための知恵を学んでるって感じかな」
　ニンゲンシャカイ？　チエ？　と、翼獣が考え込む。
　常は気力を溢れさせている翼獣の珍しい姿に小さく笑って、
「折角来たんだから、少し遊んでいくか」
　と、亮は近くに転がっていたバレーボールを手に取ると、翼獣と距離を取った。
「ほら、打ち返してみてくれ」
　言って、ぽーん、と翼獣が取りやすいようにボールを放る。
　何だか面白そうだ！　とばかりに、うってかわって瞳を輝かせ、
　――ぱしっ！
　翼獣は、頭でボールを捉えて、見事なヘディングを決めた。
　それは、あまりにパワフルに遠く遠くへと飛んでいったが、
「初めてにしては上出来だな。練習のし甲斐がありそうだ」
　と、ドヤ顔の翼獣を前に、亮もにやり。
　少しの間練習すると、翼獣は、亮の元へボールを返す加減も、ばっちり覚えて。
「随分上達したな。器用な奴だ。よし、それなら次は目標を決めよう」
　ボールを落とさずに３０回トスを続けるぞ！　と、１人と１頭の本気のボール遊びは長らく続いた。
　そして、夕暮れ時。
　亮達は、電線を避けながら、シーサイドタウンを中心に島中を飛び回った。
　ビルの合間を潜り抜ける度、スカッと来る爽快感に、亮の口元には笑みが乗る。
　楽しんでいるのは翼獣も同様で、見たことのないものばかりの世界をすいすいと飛んだ。

「次は……そうだな、川の上を飛んでみるか」
　オオウ！　と、翼獣が応じる。
　川面すれすれを飛べば、ぶわり、と水が揺れて模様を作る。
　それが、黄昏の橙や紫を纏って、尾を引いていった。
「暗くなってきたな……」
　それは、翼獣との別れの時が近づいていることを意味する。
　呟きを耳にした翼獣が、不意に、亮を乗せたまま暴れた。
「わ、な、何だ！？」
　ヘディングだ。翼獣は、先ほど一緒に練習した、ボール遊びの真似をしている。
　それに気付いて、亮は、ふっと口の端を上げた。
「その様子じゃ、次があれば５０回……いや、１００回はいけるかもな」
　また、翼獣が咆哮する。
　夜の色を帯び始めた世界の空気を、その、勿論だと言わんばかりの吠え声が、ぐわんと揺らした。