もふもふ！大型幻獣と遊ぼう！｜リアクション

もふもふ！大型幻獣と遊ぼう！

　八神修は、その翼獣の姿を見留めるや理知的な瞳に煌めきを乗せた。
「ヨク！」
　名を呼んだのと、修の戦友たる翼獣ヨクが修の元へと飛んできたのはほぼ同時。
　毛の色に銀が混じる額を軽く撫で、修はヨクをぎゅうと抱き締めた。
「ヨクも、俺のことを分かってくれたんだな」
　ぐくる、と、少しだけ不服げな声を出すヨク。
　けれどそこには確かな信頼の色も滲んでいて、当たり前だと訴えているのだと修にはすぐにわかった。
「はは、ごめんごめん。そうだよな、ヨクが聡いのはよく知ってるよ。意思の強さもね」
　笑み零して、修は慣れた手つきであっちをもふもふ、こっちをわきわきとヨクをマッサージ。
　ヨクの喉が、気持ち良さそうに鳴る。
　暫くそうやって時間を過ごしたあと、修はふと、ヨクへと問いを零した。
「そうだ、ヨクは何処に行ってみたい？」
　胸を満たすは、好奇心に出来る限り応えたい、という想い。
（今までのお礼も兼ねて、この偶然を楽しもう）
　と、修は、木の枝を手に、地面へと簡単に寝子島の全景を描き出す。
「今居るのはここな。それで……」
　修が言いかけたその時、ヨクが修の服の裾を軽く咥えて、小さく引っ張った。
　何を訴えているのかと思えば、ヨクの視線の先には、艶やかな実が生っている街路樹が。
「お腹空いてるのか？　じゃあ、まずスーパーに行こう」
　美味しいものが沢山あるよ、と、ヨクを促し、修は近くのスーパーマーケットへと向かった。
　野菜、修が梱包を外してやった極太ハム、それから生肉。
　ヨクは、それらを美味しそうに頬張って、
　――ついっ。
　鼻先で、生肉を半分、修の方へと押し出した。
「俺も食べろって？　ありがとう。だけど、俺には生肉は厳しいなあ」
　俺達は味つけて焼いたりして食べるんだよ、と、笑いながら説明すれば、少しだけ首を傾けるヨク。
　けれどじきに、修はこのまま肉を食べないらしいということを理解したらしいヨクの頭を、
「やっぱり、ヨクは賢いな」
　と、修はわしゃわしゃと撫でてやった。
　食事を済ませれば、修は、ヨクの背に乗って寝子島をぐるりと一周。
　ヨクが興味を持ち降り立ったのは、険しい崖の上だった。
　空を飛べないと、中々辿り着けなさそうな場所だ。
「こういう景色が好きなのかい？　良い眺めだな」
　パシャリと、修は、そこから見える景色を写真に収めた。
「さて、日が暮れる前に……そうだな、俺の家に案内しよう」
　夕焼け空を飛んで、修とヨクは修の家へと。
　切り分けられた世界に、共に暮らしている犬猫達がちゃんと居てくれるかどうかを修は懸念していたが、
「――良かった、ただいま」
　修達を当たり前のように出迎えたのは、愛犬のカーキーだった。
　他の家族も、修の帰宅を喜んで、集まってくる。
「ビックリしたかい？　でも、すぐ馴染むと思うよ」
　じきに、ヨクは、修の家族とすっかり仲良くなった。
　ヨクの大きな身体の上に、猫達は我先にと上り、あたたかな身体の上で丸くなる。
　その微笑ましさに、修はふわりと目元を和らげた。
　そうして修も、ヨクの隣に座り、その身体に自身の体重を預ける。
　鼓動が聞こえ、温もりが芯まで染みていく――。
「……気持ち良い。あたたかいな」
　もふもふしたヨクの身体を堪能しながら、
「また世界が繋がると良いな」
　と、修は零した。フツウではないことだけれど、それでも、と。
　段々と、夜の色が濃くなり、別れの時が近づいてくる。
　名残惜しげに鼻先を寄せてくるヨクを、