携帯戦記カプセルギア　外伝『おじさん達のカプセルギア！』｜リアクション

携帯戦記カプセルギア　外伝『おじさん達のカプセルギア！』

【二人の時間】

　同じ頃、スピカ・フォーツさんと、鷹司凜太郎くんも善場模型店の前を通りがかろうとしていました。
　二人は恋人同士で、旧市街デートの最中だったのですが。
「あ……」
　と、そこでスピカさんはとても気になるものを見つけてしまいました。
（……今、リンタロウとデートだけど、ちょっとあっちも気になる）
　それは、先日、参加したアーケードゲームの原作となるホビーロボット――カプセルギア。
　凜太郎くんも大好きですが、ゲームも大好きなスピカさん。
　さてどうしたものかと悩んでいると――
「スピカくん。あれが気になるのかい？　じゃあ一緒にまわしてみようか？」
　と、凜太郎くんの方から気を利かせて声をかけてくれました。
　というのも、彼も小学生の妹からその玩具の存在は聞いていて、ちょっと気になる存在ではありましたし、何よりもスピカさんと一緒なら、たとえ何をしていようと凜太郎くんは幸せなのでありました。
「……うん、ありがとう、リンタロウ」
　そんな彼の気持ちが伝わったのか、スピカさんも嬉しそうに微笑んで、二人でガチャガチャをまわします。
　それから、二人は店先のベンチに座り、一緒にカプセルギアを仮組みします。
「……前回の戦いを踏まえて、新規のギアを組み立てたい。仮想敵を設定して、本格的に……」
　小さく呟くスピカさんはすでにゲーマーの目になっていて、そんな彼女に善場さんは
「君、なかなかの通だねぇ」
　と嬉しそう。けれども、悲しいかな、善場模型店はたくさんの人と触れ合うにはいいのですが、じっくり機体を組み立てるには少々不向きなのです。
「それじゃあ折角だから、うちに来るかい？」
　そこで、凜太郎くんからそんな嬉しいお誘いがありました。
　彼は星ヶ丘寮での一人暮らしなので、誰に気兼ねすることもなく彼女を家に招くことができるのです。
「……！　……うん、行く」
　じつはこれが初めてのお部屋デートのお誘い。
　スピカさんは一瞬ゲーマーから普通の女の子の顔に戻り、無意識に腕など組んでしまったりしながら彼のお部屋に向かいます。

　凜太郎くんのお部屋――というか、星ヶ丘寮は部屋が一つの家なのですが――では、ちょうど和室から見える庭がとても綺麗なのでした。
　なので、二人はその和室で庭を眺めながらギアを組み立てることにしました。
　
「というわけで、僕は偶然出た武者系とスピカくんも持っている黄道十二宮系のパーツをメインに組み立ててみたよ」
　カプギアにおいては先輩のスピカさんのアドバイスも参考にしつつ組み上がったのは、上半身が武者、下半身が馬という意匠の南斗星君。乗馬が趣味で、また槍や弓といった武芸を嗜む凜太郎くんにぴったりのギアに思えます。
　一方で、
「スピカくんはいったいどんな機体なのかな？」
　と凜太郎くんが訊ねてみれば、
「……私のは、コレ」
　とスピカさんが見せてくれるのが、ゴテゴテと無骨に組み上がった可愛らしいスピカさんからは想像もつかないギア――トライアルβ。マスターとギアのギャップが凄いのです。
「なんだか強そうだね」
「……見た目より、スペック重視だから。リンタロウ、ギアバトルする？」
「うん。それじゃあお手柔らかにお願いするよ」
　そうして、二人はスマホを手にギアバトルを開始します。本体とスマホさえあればお外でもお家でも遊べることもまたカプセルギアの大きな利点。
「行くよ、南斗星君。機動力でスピカくんのギアを驚かせよう」
　愛馬に語りかける武者のように、凜太郎くんが南斗星君の脚部で畳を蹴りました。
「……機動力が武器なら、それを削ぎ落す。トライアルβ、電磁波展開」
「……っ！？」
　スピカさんがゲーマーの表情で言うと同時、電磁波の網が南斗星君を捕え、そこにトライアルβの電気鋏で容赦のない追撃。
　いとも容易く行われるえげつない攻撃に、勝敗は瞬く間に決してしまいました。
「……やれやれ、スピカくんには敵わないなぁ」
　凜太郎くんが負けてしまった南斗星君を拾い上げながら苦笑します。彼は悔しさよりも、こうしてスピカさんと同じ時間を共有できることを素直に喜んでいるようです。
　そして、そんな凜太郎くんに、スピカさんもトライアルβを拾い上げつつ、そっとその隣に座って彼の肩に頭を預け、
「……いっしょに、遊ぶのも……リンタロウと、こうしてるのも……すごく好き……♪」
　などと甘々な台詞を言って、凜太郎くんをどきりとさせるのでした。