携帯戦記カプセルギア　外伝『おじさん達のカプセルギア！』｜リアクション

携帯戦記カプセルギア　外伝『おじさん達のカプセルギア！』

【老人とＪＫ】

「一回やってみないかって？　それには及ばないよ。というのも、実はもう持ってるんだよ、あたしゃ」
　そう言って、孫から貰った余り物のパーツを組み合わせて作ったカプギア――クンビーラを取り出したのは、猫屋敷宝さんでした。
「善場さん、店では孫が世話になっているみたいだね」
　宝さんのクンビーラは、神主のような格好をしたネズミのカプギアで、小さいながらどこかありがたいオーラを感じさせます。
「おっと、これは失礼。お得意様のご家族でしたか。それにしても、猫屋敷さんが鼠とはまた面白い」
　ぷっくりとしたお腹を揺らして店長が人懐く笑えば、宝さんもつられたように表情をほころばせます。
「なに、こいつが猫のためになるものじゃて。せっかくだから、一つ誰かとお手合わせ願おうかねぇ」
　たまには若い者と触れ合うのもいいだろう、と宝さんがあたりを見まわしたそのときでした。
「どもー、『ZePet』の方から敵情視察に来ましたー、なんて」
　ちょうどそこにホビーショップ「ZePet」でバイトをしている女子校生の八重崎五郎八さんがふらりと姿を見せました。
「おお、五郎八ちゃんか。今日も元気だねぇ。だが、『敵』はひどいなぁ……。俺達は同じ玩具を愛する同志だろ？」
　善場店長は、五郎八さんとは顔なじみなのか、まるで同い年の友達のような口調で彼女に語りかけます。
「あはは、もちろん冗談ですよー。善場店長も相変わらずですよね。うちの店長もそうだけど、オトナなのにコドモっていうか」
　敵状視察とは名ばかりになごやかな会話をしつつ、「最近、うちはデカールに力入れてるんですよー」とデカールで装飾した愛機のグリフィージスを取り出します。グリフィージスは翼を生やした獅子のような姿のカプギア。ねずみ型のクンビーラとは一見相性が悪そうに見えますが――。
「なかなかいいカプギアだねぇ。どれ、一つ、あたしのクンビーラと手合せ願えないかね？」
　躊躇うことなくギアバトルを申し込む宝さんに、五郎八さんは快くそれを了承。
「わかりました、このギアマスター「568」、謹んでお相手をしましょう！」
　バトルが開始するやいなや、グリフィージスをスマホ操作で華麗に立体機動させ、クンビーラに突っ込ませます。
「くくっ。やるのう。だが、あたしのクンビーラも速さなら負けちゃいないよ」
　応じる宝さんのスマホさばきも見事なもの。
　クイックイッと指先でスマホの画面を操れば、それに応じてクンビーラが左右に電光石火のジグザグ回避。縦横無尽に空を駆けるグリフィージスと一進一退の攻防を繰り広げます。
　そんな歳の離れた二人が同い年の子供のように遊ぶギアバトルを眺め、

「やっぱりカプセルギアっていいねぇ」

　と、善場店長はやはりコドモのようににこやかに笑うのでした。

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