携帯戦記カプセルギア　外伝『おじさん達のカプセルギア！』｜リアクション

携帯戦記カプセルギア　外伝『おじさん達のカプセルギア！』

【無表情の奥に】

　岡瀬靖久さんは、そんなコドモ達の熱い熱気に引き寄せられたように、ふと善場模型店の店先に目を向けました。
（模型店か……。懐かしいね）
　靖久さんは、そこで初めてその店が模型店なのだと気づきました。
　というのも、かつては少年だった彼も今や五十代。
　娘もいますが、すでに高校生。
　気がつけば、それくらい玩具とは遠い存在になってしまったのです。
（模型飛行機とかよく作ったっけ）
　昔を懐かしむように、店先のスペースで遊ぶ子供達の様子に目を細め――
（って、スマホで動かしてる！？　……最近の玩具は凄いなぁ）
　わずかばかりに目を見開く靖久さん。しかし、彼は生来の無表情のせいか、傍目にはそれほど驚いているように見えません。
　と、そこにやはり人懐こい笑みを浮かべて善場店長がやってきます。
「どうです。最近の玩具は凄いでしょう？」
「……カプセルギア。あれで、１回百円ですか。いや、本当に凄いですね」
　善場店長の声に応じる靖久さんは興味津々でしたが、やはり傍目にはつれない返事に見えたかもしれません。
　それでも、彼はじっと玩具を操る子供達の様子を眺め続けています。
　とりわけ気になったバトルが二つ。
　一つが、四足獣型のギアを操る女子高生とネズミ型のカプギアを操るおじいさんのバトル。
（動物や、あんなファンタジーなタイプもあるんだね。だから、小さな子供からお年寄りまで楽しめるんだ）
　高速移動する獣を、ねずみがジグザグ移動で回避する様子はまるでカートゥーンを見ているよう。
　そしてもう一つが、無表情な少年が操る歩兵型のカプギアと、中学生ぐらいの女の子の操る孫悟空のカプギアによるバトルでした。
（凄い迫力だね。なんだかレベルの高いダンサーの踊りを見ているような気分になる……！）
　靖久さんは、元ダンサーで、今はダンス教室の先生をしています。
　そういえば、彼の教室に通う子供達の間でも、今、凄い玩具があると話題に出ていたような気もするのでした。
「どうです？　なんだか血が騒いで、心と身体がウズウズしてくるでしょう？」
　いつのまにか隣にいた店長がそんなふうに訊ねてきます。
「おや、わかってしまいますか。僕、自分で言うのもなんですが、あまり表情に出ない方だと思っていたのですが……」
　少し苦笑するその表情も、やはり普通の人からすれば真顔に見えたかもしれません。
「わかりますよ。うちのお得意さまにも、似たような子がいますから」
　そう言って、店長が視線をさっきの無表情な子供に視線を向けます。
　つられて、靖久さんもそちらを見て気づきます。
（……ああ、本当だ。無表情に見えて、とてもいい顔をしているね）
　その顔を見て、なんだか靖久さんは現役のダンサー時代に戻ったような、ウズウズと踊りたくなような気持ちに駆られるのです。
（……うん、そこだ！　いいぞ、頑張れ！）
　それからしばらく靖久さんはその場で立ち止まり、一見無表情のまま、真剣にギアマスター達の熱いダンスのようなバトルを見守るのでした。

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